オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ19)

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現在は開店直後の七時二十分。狭い店内は既に満席である。

満席どころか椅子が足りず、座れるカートにちんまり腰掛けて、昆布茶を啜っているおばあちゃんもいる。

朝から元気なお年寄りたちの邪魔にならないよう、私はカウンターの内側で、立ったままコーヒーを飲んでいた。

「しょうちゃーん、昆布茶のおかわりちょうだい～」

渡「ふぁい」

この店の営業時間は変則的で、午前中は七時から十時まで、午後は三時から八時まで。

体調を崩すと午後の営業は休んでいたが、それでも朝の三時間は頑張っていた、と翔太は話す。

渡「この辺老人多いからな…

明日も友達に会えると思うだけで、もうちょっと生きようって、そう思う人もいるからって…ばあちゃんが言ってた。

そしたらさぁ、俺だって早朝営業やめらんねえだろ…」

『まぁね…でも不動産契約のときに、早朝の騒音アリって書くべきでしょ、これ』

渡「そんなこと書いたら誰も契約しないじゃん」

『しないね』

渡「上に入ってくれたのがAで助かったよ。これはマジ」

粉末の昆布茶に湯を注ぎながら、翔太は言った。

騒音問題にに気がついたとき、つまり初めてグラインダーの音に叩き起こされた朝、私は本気で契約を解消し、別の物件に引っ越そうかと思った。

大家が翔太でなければ、即刻そうしていただろう。

しかし、譲歩案としてコーヒーとトースト無料という得しかない条件を出してくれたので、解約は無くなった。

「しょうちゃん、ボク、コーヒーおかわり」

「アタシもおかわりちょうだい」

「こっちはトースト追加ね。二枚で。ジャムたっぷり」

渡「ふぁい。ちょっと待って…」

ふらふらと仕事をする翔太に、誰かが「早くしないと、アタシたち死んじゃう～」と言い、みんなが笑った。

高齢者のギャグはなかなかシュールである。

忙しくなってくると、バイトリーダー(多分期間限定)の出番がくる。

渡「A、これ頼む」

今日もやはり、焼きあがったトースト二枚を私が運ぶ羽目になった。

「三階さん、こっちこっち。ありがと」

三階さん、というのは早くも私についたあだ名だ。

常連客の一人が私の姿を見て、「あの子誰？もしかしてしょうちゃんの恋人！？やるわねぇ～」と小突いているところを、

彼は顔を真っ赤にしながら「違う！三階に住むことになったAっ！」と否定していた。

なぜか、"三階"の方を採用されることになったのである。