オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ16)

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『まぁ円満離婚だし、今でも連絡はとるし…』

渡「……なーんだ、みんないい歳して独り身じゃん？んで、Aは今どこで働いてんの？」

『賃貸契約書に書いたじゃん』

渡「そんなの俺が読むわけないじゃん」

こいつ、相変わらず全てにおいていい加減すぎる。なのに部屋は綺麗に整理整頓されているのだから、つくづく人間とはよく分からないと思う。

『私は食品会社。

市場の分析とか、新商品の開発とか、既存の商品のリニューアルとか…経理なんかもやったりしてる。』

渡「ふーん、よく分かんねぇ」

『なんなのよ！』

なんて会話をしていると、阿部ちゃんとさっくんが笑いだした。

『…え、なに、どうしたの』

阿「いや、二人とも変わんないなぁって」

ちょっとちょっと。勘弁して欲しい。誰が中学から変わんないって？こんなやつと仲良くしてられるか！

そう思いながら、目の前にいる憎き店員を睨みつける。

阿「ほらっ、それ！」

『えっ？』

阿「よく二人とも、睨み合ってたじゃん！」

…はて。全く記憶が無い。癖なのか？

疑問に思っていると、さっくんも乗せて「うわっ！たしかに！」と爆笑する。

佐「授業中とか、何かと二人で睨み合ってたよねぇ～」

渡「こいつが睨んでくるから」

『はぁ？私のせい！？』

阿「なんか…うん、犬がいがみ合ってるみたいで二人とも可愛かったよ笑」

『…阿部ちゃん、バカにしてるよね？』

程なくして、新しいもんじゃ焼きが届いた。真ん中にはベビースターが鎮座している。

『てかさ、翔太って中学の時は商店街に住んでなかった？』

渡「んあ？あぁ、あの頃は二丁目の古い戸建てだった。お前何度か勉強教えに来たろ？」

『行った』

それは覚えてる。

彼は両親はおらず、仏壇には母親の遺影だけがあって、父親については知らない。

翔太は何も話さなかったし、私も聞いたことは無い。

それに、勉強会と言っても毎回遊びに走って終わった記憶がある。

渡「じいちゃんが死んじゃったとき、遺産なんちゃらでなんちゃらしたんだよ」

阿「相続税が発生して、住んでる家を売却処分したんだよ。喫茶店の入ってるビルもあるから、基礎控除内で収まらなかったの。」

渡「……そういうことだ」

『え、店主がこんなんで店の経理大丈夫なの？』

思わず聞いてしまった私に、翔太は「大丈夫」と胸を張った。