オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ2)

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「…………あ。もしかして、鍵？」

だいぶ間をおいて聞かれる。

『はい。柳瀬です。柳瀬A』

「……………そのへん、座って。コーヒー？」

また長い間をおいた後、急なタメ口に驚いた。

『えっと、いや、私は』

「いいから座んなよ」

あくまで彼はタメ口だ。

私より多分年下…二十六、七くらいのいわゆるイケメン。きりっと揃えられた眉毛に反するように垂れ下がった両目。口元のほくろが色気を誘い出す。

『じゃあ…メニューはありますか？』

「ないよぉ。ここ、メニューないの」

答えたのはイケメン店員ではなく、カウンター席に座っていた女子高生だった。

この二人は、私が入ってきた時も親しげに…というかイチャイチャ？していたように見えた。

「えっとねぇ、ここにあるのはコーヒー、昆布茶、各四百円。厚切りトーストはプラス二百円、だよ」

引き続き、女子高生が説明してくれた。

色白で肩を過ぎるくらいの髪の毛をハーフアップにして、チョウチョ型のクリップで留めていた。

『…それだけですか？』

「それだけ。ね？」

同意を求められた店員は「うん」と頷き、女子高生に微笑みかける。

『じゃあコーヒーをください』

私はやっと座り、そう言った。疲れていた。

それに、阿部ちゃんのいう"スペシャルゲスト"とやらを解明しなくてはいけない。

「トーストも食いなよ」

店員が唐突なサジェストをしてきた。提案と言うより命令に近いのだけれど。

引越しでバタバタしていたのでろくに食べていない私だが、命令されると食べたく無くなる天邪鬼さを持ち合わせている。

きっと睨みつけられ、思わずこちらも睨み返す。

『結構です』

「そう言わずに」

『コーヒーだけで』

「うちのトースト美味いよ？ね、ちったん」

「うん！」

ちったんと呼ばれた女子高生はコクコク頷き、「しょっぴー、トースト焼きながら話の続き聞いてくれる？」と店員に尋ねた。

「もちろん」

ち「じゃあ、いいよ。焼いてあげて」

『いえ。結構ですから。ほんとに、』

私は笑った。

もちろん作り笑いであり、その中に呆れのニュアンスも含ませておく。

ここの三階に住む以上、現時点でこの店員と揉めるのも面倒だという計算まで含めた結果、この顔である。

「お前、人のこと変なとこで気にしすぎなんだよ。他はズバズバ言うのに」なんて、また彼に笑われてしまうだろうか。