オレとオマエ、睨み合い中。【青】 (ページ1)

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ただいま睨み合い中。ページ1

カンカンカンと空に上る音を聞きながら、三両編成の電車を一本見送る。

風が髪のあいだを抜けていき、地肌が少しむずっとする。

三月下旬、今日は随分と暖かく、春を感じた。

「春は好きなんだよねぇ。」

いつしか、彼がそんなことを言っていたのを思い出す。

やがて踏切が開き、そのまま商店街を目指す途中、小さな川にかかる橋が見えてきた。

澄んだ水がせせらぎ、川面には生い茂る緑が映り、小鳥が囀り……なんていう趣きは一切ないけど。

法面も川底もコンクリートで固められた三面護岸、川というより用水路という無骨さ。

そんな橋を渡った先に、商店街の入口。

"雪森町(ゆきもりちょう)商店街"

だいぶ古びたアーチ状の看板に書かれた、懐かしい文字である。

ドラッグストア、青果店、精肉店、惣菜屋…駅から近い店舗はほとんど営業していても、離れていくにつれてシャッターが目につくようになる。

適当にスマホを滑らせて、友人へと連絡を入れる。

《着いたよ》

〈お！無事ついたなら良かった。スペシャルゲストが待ってるから、頑張ってね。〉

『スペシャル…ゲスト…？』

私に部屋を紹介してくれた阿部ちゃんこと阿部亮平。

彼は私が中学時代の頃からの同級生であり、一番頼りになる人である。

くすんだ黄色っぽい外壁。商店街に面している扉は一階の喫茶店用で、二階から上はビルの横の脇道側にある出入口に回ることになる。

店の名前は……

『すのー…ふぉ……れすと？』

スノーフォレスト。……多分、雪森を英語にしたのだろう。

店の扉を開けようとすると、【営業中】の文字の下に【おはなし、ききます】と手書きの張り紙があるのに気がつく。

この文字、阿部ちゃんっぽいな。もしかして雑用だったりする？

それにしても、おはなし…？人生相談にでも乗ってくれるのだろうか。

緑色に塗られた扉を押す。

「いらっしゃい」

コーヒーの香りがして、少し高めのしっとりした男性の声がする。

内装はくすんだオレンジのような漆喰壁、アンティーク調の照明が年季の感じられる木製カウンターを照らしていた。

テーブル席はたった二つ、暗い赤の布張りソファは座面がやや凹み、相当の客が通っていたと見られる。

一言で表すなら、レトロ。

もう少し繁盛してる、大きな商店街に出したら今どきの若者は通いそう。

そんなことを考えていると、

「え？」

店員が怪訝な顔で言った。