好きな所1【夏目春】 ページ8
「じゃあ、先にどうぞ。」
「はい…うんと……。」
初めてハルくんをちゃんと
意識した時はいつだったか。
顔立ちは整いすぎてるくらいだけど
それだけで落ちた訳じゃない。
ハルくんの色んないい所を知っている。
そしてそれは彼のお兄さんに
初めてあったあの日、
カードに書いたんだ。
休みの日、私達はデートする訳でもなく
2人であのカードに書いたような
お互いのいい所を言い合って
より親睦を深めようという話になった。
あの時より沢山彼のことを知っている。
「まず…顔がいい？」
「なんで疑問形なの。」
クスリと笑うその顔すら
花弁のように輝いている。
ちょっと腹立つ。
「頭がいい、意外と面倒みがいい、
お金もってる…それから……」
「ほとんどカードに書いてたことだよね。
A、もしかして俺のこと知らない？」
「えっ！そんなわけないじゃん！
まだまだいっぱいでてくるから！」
とは言いつつ。
ハルくんがハルくんであることが
もう好きな理由な訳で。
だいぶネタ切れである。
そもそも普通の女の子が求めるようなものは
当然のようにもっている彼が憎らしい。
「…頼りがいがあって」
「さっき似たようなのあったよね？
なんだっけ、面倒みがいい？」
「うるさいな、んーと…メガネのとことか？」
「…ほんとにAって面白いよね。」
嫌味ったらしく言う彼を睨む。
(…でないものはしかたないじゃん！)
「あ」
ハルくんを見ていて1番に
浮かんだことを言うのを忘れていた。
「何？」
「私を好きでいてくれるところ！」
「……っ」
どれだけ彼がかっこよくても
嫌われたら好きだということも
隣にいる資格もなくなるのだ。
ハルくんが私を愛してくれていること。
それがきっと何より私が
彼を愛する理由なのだろう。
「…何それ、ばっかじゃないの。」
少しの間、小さくそう呟いたハルくんは
私を強く抱き締めた。
深いため息が耳元で聞こえる。
「A、次俺の番ね。」
「え？ぅ、うん？」
急に体をぐっと離されて
至近距離で目が合う。
「まず、可愛い。」
「!?」
この距離でそんな目で……！
ずるいとしか言いようがない。
「それから、責任感がある。
真面目、努力家、俺より下だけど
それなりに頭がきれる。」
「俺より下だけどと
それなりにが余計なんだけど。」
文句を言うがそれすらも
彼の甘ったるい声と目に絡めとられる。
今夜、寝かせてくれなさそうな目だ。
「なにより、俺の事を好きでいてくれる。」
「！」
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作者名：芋ようかん | 作成日時：2020年1月19日 23時
