来世2【由井孝太郎】 ページ6
家に帰る前にホームセンターに寄る。
まだ夕方だ。
「えぇと…ガムテープ…。
縄…それから……あぁ、ブルーシートも。」
必要ものをひとつずつカゴにいれていく。
精算を済ませ自宅に着くと
最後の晩餐を終わらせた。
いよいよだ。
「…ほんとは、やっぱりまだ少し怖いけど。」
独り言をまるで遺書のように呟いていく。
「でも、きっと孝太郎さんが
私だったらこうしますよね。」
縄をぶら下げて台に乗る。
下にひいたブルーシートが
より現実味を帯びさせた。
私は今から死ぬんだ。
「アオミドロになるのだけは勘弁だなぁ…。」
彼との何気ない来世の話を思い出す。
「…孝太郎さんは生まれ変わっても
人間になるって言ってたっけ。
確かに、彼の事は皆が必要としそう。」
じゃあ私は？
「貴方みたいに賢くないですし、
役にも立たないし、ドジですけど…。」
だけど。
「孝太郎さんが必要としてくれるなら。
きっとまた会えますよね。」
ねぇ？どこにいたって
見つけてくれるんですよね？
顕微鏡を持って世界を
旅してくれるんですよね？
孝太郎さんが亡くなって1週間後。
私は首を吊り、息を引き取った。
……………………………………………………………
カフェで珈琲を飲む。
ただこれだけが少しオシャレで
素敵な気がする。
カランカランとカフェのベルがなった。
(ここ私のいきつけで
人普段いないのに珍しい…。)
どんな人がきたのだろうか。
どんな人が今私が飲んでいる
ものを飲むのだろうか。
「……え」
「……！やっと、やっと見つけた！」
肩を掴まれる。カフェ内なのに
力強く抱きしめられる。
「…っ……うそ……。」
「A。会いたかった。」
そう微笑む孝太郎さんの笑顔が素敵で。
誰よりも大好きで。
「私も……っ…会いたかったです！」
愛おしくて涙が止まらなくなる。
苦しい程に抱きしめられる。
地球がいくら回ろうとも。
来世だろうとその次だろうと。
どんな生き方をしようと。
どんな死に方をしようと。
私達は出会う運命なんだと。
そう確信させるそんな
出会いを成し遂げたのだ。
「もう絶対に離さない。A。」
「…っ…はい！」
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作者名：芋ようかん | 作成日時：2020年1月19日 23時
