【A3!】イージーモードな彼と私【摂津万里】 (ページ10)

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＊強制送還ページ10

「こらっダメって言ったでしょ？ね？」
「ん～～むり…」
「…こりゃ相当酔ってますね」

いまだ上から退いてくれないので頭を撫でたりしてそういう雰囲気から脱していた。
のだけど、その作戦もそろそろ通用しないようで

「いつまでそうやってんだよ、おそうぞ」
「もう襲われてるんだけど…あ、万里！スマホかして」
「なんで」

こうなったら強制送還するしかない。そう思い、万里が所属する劇団の寮へ連絡をとる事にした。

お願い、スマホ貸して？と強請れば、ん。と素直に貸してくれた。酔ってるとはいえ、甘える作戦は易々と通用するようだ。

LIMEを開き、劇団の人の名前を探す。こういう時って代表の人がいいよね…監督さんとか？

「監督さんの名前は？」
「かんとくちゃん…？たちばないづみだけど」
「立花…あ、あったあった」
「…なにすんだ？」
「ちょっとお電話、邪魔しないでね」
「んなことさせるかよ」
「はいはい、よしよ～しいい子だからまっててね～」

左腕で万里の頭を抱えるようによしよしと撫でながら電話をかけてみる。お願いだから出てくれ…！

・

「えぇっと～？こっちの道を左に…」
「どこいくんだよ…」
「万里くんのお家です。」

見慣れてる道のはずなのに、どこに行くかわかって居ない彼。誰が見てもわかるくらい顔を真っ赤にして酔っていて、その足取りもフラフラしていた。

アパートを出てから電車に乗り二駅行くと、夜でも少し賑やかな天鵞絨町に着いた。

監督さんには電話で大まかな経緯を説明した。
明日の昼から学校に行かなくてはならない万里を、今のうちに寮へ送り返した方がいいと思ったのが最大の理由だ。

時刻は8時半、腕を組み引っ張るように進む私を見ながら、彼はニヤニヤと笑っているのだから恨むに恨めない。…というか、私の不注意で起きたことなので、自分を恨むしかなかった。

「お？ここ寮じゃね？」
「やっとわかったか…重症…というか立派な建物」

どっしりとした佇まいに怯みそうになるが、それどころではない。
扉の横にあったインターホンを押すと、奥から足音が聞こえた。