＊手のひら返し ページ21
「お、A〜」
「遅い！！」
「遅れるってLIMEしただろ？」
「…見てなかった」
カウンター席でアイスティーを飲む私の隣にバーカ。とニヤつきながら座る万里、許さん。
週末観に行く『クラシック演劇』のチケットを渡すから、と大学内のカフェテリアで待ち合わせをしていたのだ。
「ほい、これチケットな。うちから客演で出るやつがいてよ、それで貰ったんだわ」
「へ〜客演とかもするんだ。その人も楽器弾くの？」
「いや、あくまでもエキストラだから楽器は弾かねぇよ」
「ほ〜。というか、関係者じゃないけど私も一緒に見ていいの？」
「そこらへんは俺が上手くやっとくからへーきへーき」
彼がへーき、と言えば大抵の事は平気なのだ。それもそうか、とアイスティーを飲む。
「ま、俺の彼女ってことで関係者でいいだろ」
そのままコップを持つ右手を掴まれ、アイスティーをズズッと飲まれた。
「も〜！なんで全部飲んじゃうの！」
「はっお前がダラダラ飲んでんのが悪い」
「腹立つなこんにゃろ」
万里のすべすべのほっぺに指を突き刺せば、この後新作フラぺ奢ってやる。と言われたので許した。
・
「結構並んでんな」
「えぇ〜もう新作出てから3日も経ったのに〜」
人気の店だけあって、店内は学校帰りの高校生からスーツを着た大人まで様々。5組ほど並んでいたが、特に急ぎでもないので大人しく並ぶ。
「万里もまだ飲んでないの？」
「おー。どうせ来るだろうと思ってたしな」
「ほほ〜ん？私と一緒に来たかったんだ？」
「調子乗んな」
さっき店員さんから渡されたメニューで頭を叩かれ、いてっと声を上げる。私からギリギリ見えない高さで見ているメニューを、万里の腕を引き寄せて覗き込む。
「私は新作フラぺクリーム多めで〜万里は〜これどう？」
「なんで勝手に決めてんだよ」
まあなんでもいいけど、と注文は私に任せてくれた。いつも通りカードでスマートに支払いをして、レシートを受け取る。その姿まで様になっていて、店員のお姉さんも頬が赤かった、気がする。
それに気付いてなのか、お姉さんに営業スマイルをお見舞いすれば、今度こそ確実に頬を赤くしていた。周りにいた女子高生からもカッコイイ〜！と小さく歓声が上がるほどだった。
「妬いた？」
「…知らない」
「安心しろ、お前しか興味ねーから」
優しい声でそう言われれば、周りの女性達に申し訳ないとすら思える優越感に浸る。まあ少しくらいはそう思ってもいいよね？
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作者名：ムリ子 | 作成日時：2019年8月1日 22時
