【A3!】イージーモードな彼と私【摂津万里】 (ページ16)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:75,548 hit

＊気付いてるページ16

「はぁ…ただいま…」

誰もいない部屋でそういえばつけっぱなしの電気だけが出迎えてくれた。
タクシー代だ、なんて貰ったけれどいくらなんでも2万円は貰いすぎなので、あとでしっかり返そう。…あ、でも現金で返すのもな…う～ん。

こういう時に万里～、と言えば面倒だといいつつ答えてくれるのだけど今は居ない。

「あ、これか～…」

キッチンに置かれたコップの中にぬるくなったウイスキーが入っていた、ちょっとだけ。
結構勢いよく飲んだんだな…なんとも彼らしい。

コップに入っているそれを少しだけ飲んでみれば、時間が経ったとはいえキツいのが分かる。

「…万里、やっぱ大丈夫じゃないよねぇ…」

ウイスキーを見つめながらさっきの事を思い出す。寮に着いた時、万里はそうとう酔っていてきっと吐き気とか頭痛もしていたに違いない。

…好きな人の表情に違和感があることくらい、気付くに決まっている。
確かに、万里は"そういうの"が得意だし、役者な訳なので隠すのも簡単に出来てしまう。

けれどあの時は酔っていて体調も悪かったのでいつも通りのカンペキな万里では無かったのに。無理してでも私に心配をかけないようにしてくれてたんだな…。

「LIMEは…明日にしようかな。」

きっと私を抱きしめた時も、自分の顔を見られたくなかったというのも理由のひとつなのだろうか。何にせよ、優しさのせいで彼が苦しんでいるかもしれない事に心が痛かった。

とは言っても、気付いてたよ！なんて言えば彼のプライド的にも私の人間性的にもよろしくないので心に止めておく。

「よし！寝るか！！」

いつまでもへこんでいたって何も仕方ない！とリビングでパジャマに着替える。

次会った時は、万里の好きなものを買ってあげよう。…ブランド物は却下するけどね。