未来の彼ら (ページ10)

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８日目ページ10

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今日はただ何もしたくなくて、フヨフヨと浮いていた。そして一つのマンションの屋上に降りた。

下界の人たちは相変わらずの日常が続く。
朝起きて、学校や会社に行って、友達と喋って…。
敵が暴れて、ヒーローが来て、倒して…時には死人が出たりして……。

上から見てるのに、救けられない。
私は何もできない。

『……こんな自分が大嫌いだ』

わかっているのに出来ない自分が大嫌い。
見えているのに出来ない自分が大嫌い。
救けられるのに出来ない自分が大嫌い。
見て見ぬ振りをしている自分が大嫌い。

『こんな私、消えちゃえばいいのに』

そう呟き足に顔を埋める。
すると後ろから、ジャリ、と地面を踏む音が聞こえた。振り向くと、そこには知った顔。

『爆豪くん…？』

「…」

ああ、彼は私が見えてないんだった。
でも、こんなに近くで彼を見れてよかった。

羽を広げ立ち上がり、屋上から飛び立とうとした時、

「待てや風女」

ぴたり、と動きが止まった。

…今…なんて……。
ゆっくり振り返ると爆豪くんは私をジッと見ていた。

『な、なんで…見えるの……？』

「あ"？知らねェよ。つかなんだよソレ」

『見たらわかるでしょ？羽だよ』

「…テメェ生きてたんか」

『？死んでるよ？だからほら、触れないでしょ？』

そう言い爆豪くんの腕に触れるも、私の手は空を切る。

でもまさか、私が見えるとは…。こんなの死んでから初めてかも。不謹慎だけどちょっと嬉しい。

「……手紙」

『ん？』

「手紙、書いたろ。あれ読んだ」

『そっかぁ…受け取ってはくれたんだね』

破り棄てられてなくてよかった。あ、でももう棄てられてるかな。

「…なんで言わなかった。病気の事」

『……人は何かを犠牲にしなきゃ生きていけないんだよ。私の場合それが「人を裏切ってでも隠す事」だっただけ』

そう言うと、爆豪くんは驚いたような顔をして私を見つめた。

痛みを伴わない教訓には意義がない。
人は何かの犠牲なしに何も得ることはできないのだから。
しかしそれを乗り越え自分のものにした時…人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるだろう

[鋼の錬金術より]エドワード・エルリック