31 ページ31
.
「マジで何これ…」
なんなんだよ、慎太郎が1人になると苦しそう？意味わかんない、みんなの前では笑えんのに？はあと一度ため息をついて紙袋を机に置いたままごろりと床に寝そべる。
なんだよそれって呟いたあの時の慎太郎に無理矢理にでも好きなのは慎太郎だよ、って言ってたらどうなってたのかな、苦しそうな顔はなんでなんだろう。考えても全く答えは何一つとして出てこず、重苦しい空気で部屋がどんよりした感覚になる。なんで終わったことを私はいつまでも考えてんの、と我に帰ることができたので松村くんから押し付けられた紙袋を開けることにする。
ていうかなんで松村くんが買ったんじゃないのに松村くんが持ってるわけ？こんなかわいい紙袋多分松村くんの趣味じゃないだろうし、そう思いながら中にある小さな箱を取り出して、それで、それ、で、
「…なにこれ」
動けなくなる。ぱか、と箱を開けた瞬間目に飛び込んできたネックレスに、意味がわからない。ガラスケースになかったやつ、なんで、こんなとこにあるの？
『男の子が買って行きましたよ』
『背が高くて…笑顔が素敵な感じの！』
『渡したくても渡せないみたいな』
…店員さんの言葉を反芻しながらも松村くんが買ったんじゃないのはわかる。このネックレスを私が欲しがってたのを知ってるのなんて1人しかいない。なんで？ねえ、慎太郎、こんなのっておかしいよ、私嫌いって言ったよ、あれから目もずっと合わせてない。逃げてる卑怯者だよ、勝手に期待した酷いやつだよ、何を考えてこれを買ったのかな、なんで買いに行ったのかな。
目と鼻の奥が痛い。ぐ、と眉間に皺を寄せて必死に迫るものを耐えればひらりと紙袋から一枚の紙がこぼれるのに手を伸ばして裏返す。
…いやだ、やめてよ、どうすればいいのか分からないことがまた一つ増えた。「あげる」なんてたった3文字のボールペンで記されたその意図は何なのだろう。もう何も堪えられない、だめだ、おかしくなる、訳がわからなくなる。
自分のこと好きじゃない人にこんなことするの？幼馴染にこんなことするの？慎太郎、こんなの他の人にもしてた？他の人にもしてるならわかるけどそんなこと聞いたこともないよ、慎太郎目立つんだから噂は耳にするけど、そんなこと、聞いたことない。
「…嫌だ」
嫌いになりたい、好きなんてもう捨てたい。何も思ってない人にこんなことしないで、私は本当にどうしようもない。だいすき、どうしよう、嫌いになりたいだけでずっと、ずっとだいすきなんだよ、早く、忘れさせてよ。こんなこと、しないでよ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1083人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七瀬(プロフ) - lemonさん» わ〜！ありがとうございます！少しでも楽しんでいただけていましたら幸いです！たくさん更新できたらいいな〜と思ってますので最後までお付き合い頂けましたらうれしいです！ (2023年2月25日 19時) (
レス) id: 652635b4cf (このIDを非表示/違反報告)
lemon(プロフ) - ほんとにこの作品がだいすきで、 このきゅんきゅんがたまりません！！これからの更新も楽しみにしております！^^ (2023年2月22日 22時) (レス) @page16 id: b772619bf0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬
| 作成日時：2023年2月7日 22時
