[アメコミ] 瓶で殴る。 [短編集] (ページ10)

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虚構 :シビルウォーページ10

落ちて、落ちて、落ちて、落ちた。
固いコンクリートに何度も頭と身体をぶつけ、ろくに受け身も取れずに回転しながら一番下まで落ちた。
左腕が折れたが、そんな事などお構い無しに金属アームは私を襲う。
こちらとしても伊達に実験台として生きてきた訳では無い。すぐに折っていない方の腕で応戦する。

と思えば後方から盾が飛んできた。予想外の事に対応できずにいると、運悪くか折れた方の左腕に直撃。
その衝撃が手伝って、折れた骨が勢いよく腕の肉を突き破り飛び出した。
あまりの激痛に一瞬意識が飛んだ瞬間を狙われ脳天に金属パンチをお見舞いされた。

神様、どうか、次に目が覚める時にはこの戦いが終わっていますように。

そう願いながら暗闇へと意識が吸い込まれる。

目が覚めた時に見たのは、キャプテンがトニーに馬乗りになって彼のマスクを叩き割った瞬間。
そしてそのまま、勢いよく振りかざした盾を彼の胸へと叩き込む。
ほぼ絶叫に近い声で彼の名を叫んだ。
腕で身体を起こし、よろけながら彼の元へ。

途切れ途切れの呼吸を繰り返し、傷だらけだろうにまだ立ち上がろうとするトニーに覆いかぶさり泣きながら乞う。

「もう、もうやめて、もう…これ以上はやめてください…お願いします…もう追わないから、どうでもいいから、やめてよ…」
「…A、」

自然と敬語で話していた。
そんな私をキャプテンも泣きそうな表情で見ていたけど、次第に彼の目から私達は消えていった。
後ろで様子を伺っている『親友』を肩で担ぎながらこの場を去ろうとするキャプテンに向かってトニーが「盾を返せ。」と低い声で言う。

彼がこちらを振り向きもせず盾を捨て置いた瞬間、終わりなのだと悟った。
いつの間にか半身を起こしていたトニーは酷く落胆した様子で私に寄り掛かっていたけど、今は彼を慰めるよりも今後どうやって裏切り者とその『親友』を殺すかに頭を使う必要があった。

そうでもしないと、目の前のこの惨状に耐えられない。
アベンジャーズ崩壊の瞬間、恩人を傷つけられた怒り、今までの信頼を全て奪われた悲しみ、騙された憎しみ。

全てが混ざり合ったこの感情に心が耐えられるとも思えない。
ナターシャが来るまで沢山の事を考えた。
でも結局最後に行き着いたのはただの『虚無』。
何も残らなかった、アベンジャーズには何も無かった。

アベンジャーズは解散、その後の活動は各自。
そう伝えられ、ついにヒーローでも無くなった。