[アメコミ] 瓶で殴る。 [短編集] (ページ23)

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ひとり会話ニグマページ23

「クリンゲル。」

この声が僕と彼女の会話が強制終了される合図。
この声が聞こえた瞬間、クリンゲルさんは救いの手を差し伸べられたかの様に笑って「じゃあまたね。」と足早に僕の元を去るのだ。
許せなかった。常に僕と彼女の世界を邪魔するこの人が。

「クリンゲル、少し手伝って欲しいの。」
「えぇ、勿論よA。じゃあ、えと、ニグマさん。またね。」
「…えぇ、また。」

いつもと同じ様にそそくさと僕から遠ざかる彼女の背中を見詰める。
しかし今日は少し違った。

「…何か僕に用があるんですか？Aさん。」
「…いえ、何も。」

はぁ？人の顔をまじまじと見つめておいて何も用はありません？ふざけてるのか。
「…あぁそう。では仕事があるので。」と無感情に告げてさっさと資料室を後にする。
あんな変人に構っていられない。

「ニグマさん、もう彼女に付きまとうのはやめて下さい。」

そう言われたのが1か月前。あの時は本当にショックだったよ。
だったよな？なぁ？だが君は君の意思でとった英雄的行動がクリンゲルさんに評価されて晴れてお付き合いをする事になった。
あの時のAの顔を見たか！？泣きそうだっただろ。まぁ君は目の前の幸せでいっぱいだったろうから知らないか。

「クリンゲルが、クリンゲルが帰らないんです。ニグマさん。」

可哀想に。きっと責任を感じていた事だろう。やめてくれ。やめないさ。
君は知らん振りしたよな。そのせいで結果的に"噂"が広まり彼女は自ら仕事を辞めた。無実なのに！
だが彼女は罪深い。あんなに僕達とクリンゲルさんの仲を邪魔したんだから。彼女もまた罪人だな。アハハ！
だから悪い事じゃない。報いを受けさせた。その通り。

「ざまあみろ。」

心の底から清々しい気分でそう吐き捨てれば、鏡の中の自分もお喋りをやめてニッコリ笑った。