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Existence9 ページ9

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“頼む。酷な事だと分かっている。
だが、お前しか居ないんだ”



与えられた役割。あの時、誰を憎み何を恨めば良かったのだろう____



整の脳裏には在りし日の情景が描かれていたが、言葉は全く違うことを述べていた。



「太宰君、今日はお友達を連れて何しに来たの?」



「はあ!?」



太宰と中也が声を揃えて叫んだ。“オトモダチ”は禁句だったか。



「冗談さ。色々と調査している話は小耳に挟んでてね。俺でよければ何か協力するよ」



太宰は肩を竦め、中也は鼻で笑った。
二人してそんな反応(リアクション)されると流石に傷つく。



「協力するって、伊藤さんが手掛かりを持ってるとは思えないんだけど」



「そもそも俺らが何について調査してるか知ってんのか?」



「二人してお兄さん虐めないで泣くよ?」



太宰は呆れてため息を吐いた。いい歳の大人が何を云ってるんだか、と冷たい視線を送る。



正直、整の部屋に訪れた理由は特に無かった。ただ、もう会えない気がしたのだ。
不確かな“何か”に縋るなんて、自分でもらしくないと思う。



「ちょいちょいちょい、何で帰ろうとしてるのかな!? 俺に用事あったんじゃないの?」



踵を返した太宰の背中に思わず声をかけてしまった。それが一線を超えた行為だと気がついたのは、振り返る一瞬に口元が“への字”に歪んでいたのを見た後だった。



「最近、大人を揶揄うのが楽しくて。だって、伊藤さんの反応面白いんだもの」



振り返った太宰は子供っぽく微笑んだ。怜悧な少年がここまで分かりやすい嘘をつくなんて。太宰も15歳の子供ということか。



またね(・・・)、伊藤さん」



部屋を去る太宰。中也は「邪魔したな」とだけ云い、去ろうと一歩踏み出した。



「__」



整の一言に中也は足を止め、背を向けたまま動揺を必死に抑えた声色で尋ねた。



「手前、何を知ってる」



「君自身(・・)のことは何も知らない。君が飼ってる(・・・・)ものについてなら……」



少し詳しい、と金色の瞳を細め微笑んだ。
中也が「教えろ」と発する前に太宰の声がそれをかき消した。



「何してるの、早く行くよ」



中也は軽く舌打ちをし、名残惜しそうに部屋を出て行った。



部屋に一人残った整は瞼を閉じて、誰かに囁いた。



アレ(・・)は君の同胞か何か?」



暫しの沈黙。整は再び口を開いた。



「ふぅん、そういう事。そりゃタチ悪いね」



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一言日記

髪伸びてきたな、自分で切ろうかな。


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歌恋 - 続きが楽しみです!お話が自分の性癖にドストライクでした… (12月31日 20時) (レス) @page13 id: 48a7de9cc2 (このIDを非表示/違反報告)
Ashar(プロフ) - 姫歌さん» 姫ちゃんお久しぶりです! ありがとう! 色々落ち着いたからまた細々更新していきます〜! (2019年8月14日 17時) (レス) id: 1b24626048 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - おひさしぶりです。相変わらず最高でした! (2019年8月3日 18時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
Ashar(プロフ) - 小太刀さん» わぁい! ありがとうございます!! (2019年6月2日 17時) (レス) id: 1b24626048 (このIDを非表示/違反報告)
小太刀 - え、かっこいい好き (2019年6月2日 14時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Ashar | 作成日時:2019年6月2日 0時

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