No.9【流川 普】※ ページ10
「い、いやっ! いやあああああああ!!!」
甲高い女の悲鳴が夜道に響く。生憎、人通りも家もないので、助けなぞ望めない。それでも汗と涙で化粧をぐしゃぐしゃに這うように助けを求める姿はさぞ道化師にとって滑稽であろう。
その当の道化師は周囲を警戒するように静かに獲物を追い詰める。女の口を元々持っていたガムテープで塞ぎ、声を封じる。
直後、なんの躊躇もなく女の足に齧り付いた。
肉が抉れ、血濡れた骨が曝け出される。余りの痛みと恐怖心に女は失禁したまま意識を失った。
道化師が続けてもう一口足を口にしようとした時だった。
「そこまでにしてもらおうか」
凛とした男の声が夜道に響く。
自前の黒く闇に溶け込んだナイフを道化師の左目の前に突き出す。街灯に反射して光を帯びたナイフが鋭い光を帯びる姿は急所を抑えたれた道化師にとって恐怖でしかなかった。
(気配を感じなかった!?)
そう、道化師は全く人の気配を感じなかった。ましてや足音など聞こえもしなかった。食事に夢中になって、周囲への警戒を怠っていた訳ではない。それなのにだ。
息を呑んだ。身体に散る二つの心臓が大きく脈打つ。
「お、俺は、この女性の悲鳴が聞こえたから助けに来ただけだ!」
苦し紛れの弁明は男には大層見苦しく思えたのだろう。不快そうに顔を歪め、ナイフを持つ手に力を込める。
「そうか」
刹那、男のナイフが道化師の左目を引き裂いた。大量の血が溢れ出て男の服や手を汚す。ナイフに付着した血を払いホルダーに戻す。
「哀れなだな」
そう吐き捨てて、他の場所を探索していた仲間に連絡を入れ、女の足に簡素な止血行為を施す。冷たくなりつつある道化師を担ぎ上げ、うるさいサイレント音を聞きながらその場を後にした。
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あいす(プロフ) - 更新しました (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - 更新します (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - ほたて。さん» ありがとうございます (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
ほたて。(プロフ) - あいすさん» 返信が遅れて申し訳ありません。メッセージでお送りいたします。 (2020年2月1日 14時) (レス) id: 9d5ee3c439 (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - すみません。パスワードを教えて欲しいです (2020年1月19日 12時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Annihilation x他10人 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/9A66AzbTW0ucNfU
作成日時:2019年10月11日 17時