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「あー！うま！仕事終わりの酒は最高やな」
連れてこられた居酒屋。
アットホームな、隠れ家的な雰囲気のある
落ち着くお店。
グラスのビールを一気に飲み干し、
空のグラスをバンと机に置いた。
『……本当に飲むんだ…』
私の前にも当然のように置かれているそれ。
「当たり前やろ！居酒屋来て酒飲まんとか邪道や」
『…は、はあ』
「俺がな、19の頃とか普通に飲んでたで」
『……不良？』
「んー…そんなんちゃうよ。
ただ、ロクな生活送ってなかっただけ」
真っ黒な髪にピシッと着られたスーツ。
……そんな風には見えないけどなあ。
『…どんな19歳だったんですか？』
ビールのお代わりを頼んだ永瀬さんに問いかけると、薄く笑った。
「お前、いい奴やな」
今日は俺の奢りやから、まあ飲め
そう言われ、目の前のビールに手を伸ばす。
『……にが、』
一口目から苦くて、思わず顔を顰める。
「大人の味。」
『…苦いです』
「一人で無理して大人になろうとしてた」
『え？』
「19の頃の俺」
なんの脈略もなしに、永瀬さんが口を開く。
「でも今思えば、あれこそバカみたいに真っ直ぐやったんやなって思う」
『…えっと……』
「お前見てるとさ、なんか俺と重なる」
『……私、そんなにロクな生活送ってないように見えます？』
「いや、そうやなくて
いろいろ諦めたような目が似てる」
永瀬さんが発する言葉の一つ一つが、
恐ろしいほどすんなりと、私に染みる。
「俺には死んでるように見える」
思わず息が止まりそうになった。
初対面のくせに
『わ、わたしは……っ』
「でも、」
『…っ』
「その目の奥に、誰かいる。
当たってるやろ？」
痛いところを突かれて、言葉を失う
返す言葉がなくなるとはこの事だ。
「仲良くしよーや、ふわこ」
『………』
ニヤっと笑って、またグラスに口をつける
「あ、きたきた。
ここの牛すじめっちゃうまいねん」
そして、何事もなかったように
運ばれてきた牛すじに手を伸ばした。
『……永瀬さんって、友達いないでしょ』
あっつ、とふーふーしていた顔をパッとあげた。
「バレた？」
え…？
冗談で言ったつもりだった
こういう人って絶対友達多いタイプだから、
それを分かっててふざけただけなのに
「はは、すげー。当たってる。
俺、とっくの昔に全部捨てたんだよな」
急に真剣な眼差し。
場の空気が一気に変わった。
『…全部？』
「そう。
あ、でも会社のお節介な先輩だけはいつもいたけど」
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林檎(プロフ) - はじめまして！最初にこの作品を見つけて呼んだ時は月光インセストを読んでいない状態でしたが、月光インセストを読んでからこちらを見るとより一層切なくて面白かったです！本当に大好きです！更新無理のない程度にお待ちしております！！ (2020年11月3日 15時) (
レス) id: 96ebd3d640 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 月光インセストもこの作品もすごく好きです！主人公はどんな人なんだろうって、きっとすごく魅了的なんだろうなと思うし、主人公以外を女だと思ってないって言い切れちゃう廉くんもめちゃくちゃカッコいいって思いました！紫耀くんにも幸せになってほしいです (2019年8月17日 21時) (レス) id: cc08c80ce0 (このIDを非表示/違反報告)
みにれお(プロフ) - 続きがすごく気になります！ぜひ更新してください！！！ (2019年8月13日 17時) (レス) id: 17710468a0 (このIDを非表示/違反報告)
詩織(プロフ) - 続きが気になります！更新お願いします！m(_ _)m (2019年1月12日 0時) (レス) id: 2bc913fedf (このIDを非表示/違反報告)
Mt.Wind Bell(プロフ) - 更新楽しみに待ってます( ´ ` ) (2018年12月15日 8時) (レス) id: 4eba5a31cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：C-N | 作成日時：2017年2月5日 1時
