ポイズン・モンシェリ

014 ページ14

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「本当にそれで良いのか？」

だだっ広い社長室。
目の前に、真剣な面持ちのお父さん。

コクリと頷いた。

紫耀さんの会社に資金援助する事で、
うちの会社にとっても好影響があるらしい。

「お前はそこまでする必要ないんだぞ？」

『いいの。私がそうしたいだけだから』

「そうか……」

お父さんが、カップのコーヒーを一口飲む。

お父さんに話を通したという事は、
紫耀さんと正式に、身内になるという事。

「…夢は変わってないのか？」

優しく微笑んだお父さん。

その表情に、そういえば昔は自分の夢物語を永遠と語っていたなあと思い出す。

『変わってない、かな』

「なら、平野君にしっかり伝えるんだぞ」

『……うん、』

曖昧な返事をして、社長室を出た。

大学生の私には馴染みのないオフィス。
大人達が慌ただしく働いている。

紫耀さんもこんな感じなのかなあと思うと、
つい口角が上がる。


ずっと、

幼い頃から、

夢があった。


綺麗な夜景の見えるフェリーの上で、
真っ赤な薔薇とダイヤのリングを
大好きな人に貰う事。


『……紫耀さんに、伝えろ、か』

私が言えば、彼ならきっとその通りに叶えてくれる。

だからこそ、
伝えて良いのかと戸惑う。




「なあ、君。」

『…やっぱ、言えないや……』

そういう言葉は、紫耀さんの口から。
彼の思うタイミングで、
彼が選んだシチュエーションで聞きたい。

「おーい！」

薔薇じゃなく、雑草でも、
ダイヤじゃなくてガラスでも

紫耀さんが選んでくれたものが
一番価値のあるものだと思う。

うんうん、と独りでに頷いた瞬間、
頭にポンと、重い衝撃。

『……え？！』

「どんだけ無視すんねん」

訳が分からず、見上げると
関西弁を話す男がチョップをくらわせていた。

『……だ、誰ですか！？』

「俺さあ、営業でここ来たんよ。
でも会社広すぎて帰れへんねんけど」

『…あ、はい』

「もう今日は直で帰れるって日に限ってこれやから嫌になるわー」

『……』

「あ、てか、お嬢ちゃんこんなとこで何してるん？見るからに学生やけど」

『……』

永遠に話している彼を見つめる。
顔は滅多にいないイケメンなのに、

二つに分けるとすれば、嫌いの部類に入る。
なんせ、お嬢ちゃんと呼ばれたのだから。

「あーもー！Aー」

『…え？』

突然の事に、ビクリと反応する。

「どうした」

『人の名前、急に叫ばないでよ！』

「はあ？」



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