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お姉さん、危機一髪 ページ5



「なんかすいません、突飛な客で」

「ああ、いや、別に大丈夫ですけどね…」

あの後、むせ返った天童くんは未だに驚きと困惑で固まっている私に向けて涙を拭いながら「太眉で堅物そうなのは俺とタメの牛島若利クン、こっちのクリームアシメが後輩の白布賢二郎!!」と名前を教えてくれた。紹介のされ方が気に食わなかったのか眉間に深いしわが寄っていた白布くんだが、先輩の手前何も言い返せなかったのだろう。とても不服そうな顔をしていた。

彼らはこの店の近くにある、白鳥沢学園の生徒さんらしく今日は部活が早く終わったので立ち寄ったとのこと。なんでも天童くんの友達の誕生日が近いとかで、プレゼントを見繕いに来たと言っていた。校門前で見かけた二人を半場強制的に連行してきた、とも。
当の本人はプレゼント探しに夢中だし、牛島くんは忙しなくうろうろと店内を徘徊している。うちの店が、男子高校生が気軽に出入りする様な空間ではないから見るもの全てが珍しいんだろう。あらゆる商品をじいっと見つめ、商品のポップに目を通したらまた次の商品へ、の繰り返し。堅物そうに見えて、探求心は強いみたいだ。


…はてさて、どうしたものだろうか。先輩の二人は自由に店内を見て回っているので放っておいても別段良いのだが、取り残されたアシメくんが問題だ。さっきからずっとレジ横の休憩用の椅子に座ってスマホを弄っている。
現代っ子だなぁ、なんて思いつつ隣にしゃがんで「何をしてるんですか?」「白布くんは見て行かないの?」と問いかけても、「いえ」「別に」と端的に、画面から視線を上げることなく返事をしてくる。冒頭の会話以降、言葉のキャッチボールが上手くいかない。これでは私が投げ疲れるだけだ。

この子はそっとしておこう、と思い立ち上がると揺れたチュールスカートが視野に入ったのか、白布くんが私の足元にチラリ、目をやる。余韻でたゆたうスカートを目で追う彼は、玩具をくりくりの目で追う子猫のよう。
男の子だから、こういうデザインの服が珍しいのかな、なんて、会話の口実にでもしようかと口を開きかけた時、これまたあっさり、彼は


「似合ってないですね、それ」


とか失礼極まりない台詞を言ってのけたのだ。
一体私が何をしたって言うんだ。



悪辣で居ろよ、ばか→←飲み干せない炭酸水



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作者名:ヤマト | 作成日時:2020年3月4日 3時

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