独りの少年と五年生。

(２) ページ4

斜面を登り切り、視界が開ける。
近くの茂みに身を隠し、様子を伺った。


小さい頃に見たものよりはマシではあるが、それでも気分が悪くなる様な光景が広がっていた。


戦場を覆う土煙の中、敵と味方が入り混じって乱戦状態となっている。
時折爆発しているのは、爺さんに教えてもらった焙烙火矢と言うものだろうか。

どちらにせよ、さっさと立ち去るに越したことはない。
せっかく登った斜面を降りながら、思わず




「死にたくないなら、戦なんかしなきゃいいのに」


そう呟いた瞬間。


上からなんか降ってきた。咄嗟に避ける。




‥‥………………………人？





呆気にとられる。意味が分からなかった。南蛮の劇じゃあるまいし。

青紫色のような忍び装束を身にまとい、ぐったりとして動かない。
恐る恐る近づいてみた。


呼吸が荒く、左脇腹と右肩から出血していた。
足も折れているのか、起き上がることも出来ないようだ。

髪は黒に近い灰色で、手入れはしてないと分かるくらいボサボサだ。


俺と歳があまり変わらないように見える。
もう少し近づいた。

うつ伏せになっていた顔を覗き込む。


震えながら瞼が上がり、琥珀色の目がこちらを見た。

(３)→←出会い編　(１)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す