us,tp4_発熱_#06 ページ47
おでこに冷たいタオルを乗せると
珍しく人の子らしく表情が緩んだのを見て
もっと引き出したくて、確かめたくて深く深くキスをした。
お前はこの世で一番めんどくせぇ感情分かるの？
結果としてはなんだか腑に落ちない大成功。
矛盾しているけれど本当にそんな感じだ。
潜伏が生業で、たまに
ソウイウことをしなければならない依頼だってあるので
慣れていてる彼女に敵うわけがなかった。
余裕そうに俺から離れたけど、正直俺は負けている。
だからちょっと腑に落ちない。
でも、皮肉にも今まで見てきた中で
一番人っぽい表情が見れた。だから大成功。
我ながら最低な優越感に浸る。
ドアがノックされた。
「マコ。」
「は〜い。どうぞレトさん。」
ドアが開いた。
手に持つ銀色のトレーの上には2本の注射器が置かれていた。
「大集合してんな。」
「中和剤出来た？」
「出来た。けど、本当何で生きてるのってレベルだね。
コッチで打つのも相当濃いから、結構熱上がるからね？」
毒をもって毒を制すとはコレのこと。
「分かってる。よろしく、レトさん。」
「ん。分かった。
キヨくんちょっとそこの椅子交代して。」
キヨが座っていた椅子にレトルトが座って
サイドテーブルの空いている隙間に銀色のトレーを置いた。
心拍数と血圧を測っている。
「…はぁ。」
レトルトはため息をつきながらジトッと俺達3人を見た。
「マコ。コイツら何した。」
「え？」
「心拍数上がってるけど。」
キューンとしてしまった。
「さっきのやつ、ホントはドキドキしてたってこと？！」
ガッチさんはちょっと興奮気味だ。
「お願いだからガッチさんちょっと黙って？！」
「そういうことらしい。ほら、また上がった。
なぁに、誰が何したの？」
レトルトが笑った。
顔は合わせてくれないけれど。
それがもうハチャメチャに可愛くて。
「まぁ俺は頭の先からmm単位で
ほくろの位置分かるし、いいや。」
レトルトはまた違った方向のこじらせ方をしている。
「何もよくないよ変態！」
彼女のツッコミが入った。
「え、つまり表現下手くそなだけってこと？」
キヨが無意識に畳み掛けた。
あぁ…でもそれ、わかる。分かんないだけなんだよな。
模倣は出来るけど自分本位になるとどう表現すればいいか…
コイツめちゃくちゃ人間じゃん。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2023年10月14日 22時
