us_貧血 ページ5
「うおっ？！」
「すみませ…ってなんだ。ビビリのうっしーか〜笑」
人を感知すれば明るくなるはずの照明。
真っ暗だったので人がいるなんて思いもせず近づいた。
「なんだとはなんだよ…。
マコ何してんだこんなとこで。」
「うっしーこそ何しに来たの？」
「飲みもん買いに来た。
ここなら俺が好きなやつ売ってるから。」
こんなとこに何しに来たんだ。と問うには理由があって、
「こんな遠くにご苦労さん…笑」
ココは楽屋から一番離れている自販機だからだ。
あれ…？と違和感に気がついた頃に
ベンチから立ち上がった彼女が一瞬で消えた。
「え…？！」
と思えば下にしゃがみこんでいた。
「やっぱり顔色悪いよな？立ちくらみ？」
「うん。」
「ちょっと失礼。」
顔を手で包むようにして親指で頬を下げ
下瞼の裏を見てみるとそりゃあ見事なまでに真っ白。
瞳が揺れているのも確認できた。
「貧血だな。」
ベンチに座らせるために少し持ち上げる。
座った後に目眩が酷いのか目を瞑った彼女を見て
体が冷えないように俺の着ていた上着を羽織らせた。
「他のやつは知って…る訳ないよな。」
じゃないとこんな所のベンチに座っている訳がない。
「うん。」
分かっていた。
彼女といえばお馬鹿で元気な奴。
だから言えなかったのだろう。
パタパタと足音が聞こえ会話が止まった。
共通の知り合いである実況者が立ち止まり
彼女の俯いていた顔と声は素早く上がった。
「残念。作戦会議中で〜す。」
そういえば次のゲームでは俺と彼女がチームだ。
「仕方ない。別のとこ行く？」
「そだね。」
2人は左へと戻っていった。と同時に彼女の頭が下がった。
静かに上着のフードを被せ、ゆっくり背中を擦った。
完全に人の気配がなくなった頃に声をかけた。
「お前なぁ…」
「ごめ…待って。」
「吐きそうな感じ？」
「そこまで…では…ない…」
擦るのを止め手を置いたままにした。
「分かった。」
背中に置いた手がじんわりと上下に動いている。
数分するとゆっくり顔を上げた彼女。
「大丈夫って判断でいい？」
「うん。マシになった。ありがと、うっしー。」
最初と比べればまだマシになっただけだ。
「無茶はしてくれるな？」
「うっしーに任せるよ。」
バレてしまっている相手に虚勢を張っても
どうしょうもないと気がついてくれている実は頭の良い彼女。
「任せろ。」
彼女を…マコを守るため。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2023年10月14日 22時
