ゼロ距離まで (ページ43)

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真っ白な世界で澪奈が私を呼んで、私は聞こえないフリをしてしまった。
これは夢だということは分かっている。
でも息が苦しい。胸が痛い。
手を胸に当ててしゃがもうとすると彼女は寂しそうな顔をしてありがとう、そう言って真っ白な世界に落ちた。

「おい、大丈夫か！？」
「...！？」

突然耳に響く大きな声で飛び起きたが心臓のあたりがバクバクとしていて息が荒い。
なんの夢を見ていたのかは覚えていないが変な汗が背中をつたう。

「あれ、ここは美術室ですか...？」
「美術準備室だ。」

細かいと口から出そうになったがにっこり笑う先生を見ていると言い返せなかった。
確か瓦礫のところで寝落ちしてしまったんだっけ...。
昨日最後に食べたのはお昼ご飯のお弁当だけだ。ぐぅっとお腹がなると先生は昨日とは打って変わって優しく笑いクラスの奴らも起きてるからとパンの入った袋を手渡した。
そのまま先生にお礼を言って教室へ戻ると全員の目がこちらに向く。もちろん疑いの眼差しが多数だ。

「Aどこにいたの。」
「寝れなくて廊下で涼んでたら寝落ちしたみたいで先生に運ばれて美術室の床で寝てたみたい...。」

唯月からはへぇ、と興味無さそうな声が帰ってきた。
Aは先生に持たされたパンの袋を教卓において先生からと言うと華が満面の笑みをうかべ袋に飛びつく。
いくつも持っていこうとする華に一人一つだと伝えるとしょんぼりさせてしまった。仕方がない、華はこの教室では男子に負けないほどの大食いなのだからこんなパン一つじゃ足りないだろう。

ノロノロと全員が教卓からパンと牛乳をとり床に座って食べ始める。Aも食欲はなかったが食べなければ頭もまわらないし体も動かない。無理矢理胃に押し込め牛乳で腹の奥へと流し込んだ。