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澪奈のドーピング疑惑が浮上し騒ぎになった時、マイボイでも急上昇ワードにもあがっていた。知らなかったわけじゃない、でもそんな事する人じゃないってわかってたから知らないフリをするつもりだった。
教室に入るとやっぱりその話題で持ちきりだ。たまたま後ろから入ったので唯月と目が合いおはようと言うと携帯を取り出した。
「A、見た?」
「何を。」
知らないのだろうと思ったのか顎で澪奈の席あたりをしゃくるとそこには酷い言葉がかかれた机がある。
「これいじめじゃん。」
「この前の大会で澪奈がドーピングしたって。認めるまであいつと喋んなよ。」
「そう...勝手にすれば。」
机にはひどい落書きがたくさん書かれている。Aは教室にいたくなくそのまま屋上へと向かった。
教室で澪奈の姿はみていない。来ていないのかもしれない。マインドボイスではたくさんの誹謗中傷が書き込まれている。見てないといいけど、そう思いながら屋上へ続く階段を上ると椅子にすわり空を仰ぐ澪奈がいた。
「A...。」
「...私信じてるよ。」
「ありがとう。」
悲しげに笑うとしばらくの間、澪奈は目を閉じて喋らなくなった。
HRはもう鳴り終わり1限目が始まっている。
どちらも教室に行こうとせずただ時の流れに身を任せているだけだ。
何度目か風にゆられた髪の毛が顔にかかったところで澪奈があのさぁ、と切り出してきた。
「私Aに傷ついて欲しくないの。」
「え?」
「だから私のことは無視して。みんなと同じように。」
嫌だとかみんなを説得するとかそういう気の利いた言葉は出てこなかった。
ただ黙って頷き澪奈の手を握る。澪奈は目を大きく開き涙が頬を伝うのが横目で少し見えた。Aはこういう時どうしてあげればいいのか分からず目の前の空を真っ直ぐ見つめ澪奈を見ないようにした。
なぜなら見てしまえば澪奈の強くありたい気持ちを踏みにじってしまいそうだったから。
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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2020年4月9日 1時