ゼロ距離まで (ページ15)

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モニター越しにみる映像はどこか現実とは思えないものばかりだった。
窓を叩く生徒がいたり廊下の瓦礫。映画を見ているような気分になる。
その主人公はいま自分だと言うのに観客のひとりだ。

モニターがグラウンドにかわり先生達が大きく写された。
その中には警察官もいて先生はやっと来たかと楽しそうに話す。
もし捕まってしまったら先生はどうするのだろうか。でも、先生のことだし何か考えているに違いない。

「言っておくが何も考えてないからな。」
「え？」
「顔に書いてる。」

顔に手をやり反射する窓をみる。そんな深刻な顔でもしてたのだろうか。
窓の外の光は暖かそうで準備室内は薄暗いが少しだけ刺す光が外との接点を唯一保ってくれているきがした。

「先生は捕まるんですか？」
「そうだなあ、終わるまでは捕まらないつもりだよ。」
「じゃあ終わったら先生とさよならなんですね。」
「寂しいか？」

顔だけこちらを向き笑みを零すと答えも聞かぬままモニターに向き直りマイクのボタンをONにした。

「警察の皆さんご苦労様です。今生徒にある課題をやらせています。次の指示があるまで大人しくしておいて下さい。大人しくしていない場合は...。」

ドゴォンと外から爆破音が教室まで轟きモニターを見ると画面左上、グラウンドの倉庫が爆発した。

「...生徒の命は保証しません。それでは後ほど。」

マイクをOFFに切り替えるとモニターを教室に切りかえAの位置まで椅子をさげ並んだ。

「お前は死ぬのは怖いか？」
「楽に死ねたら怖くない、かも知れないです。」
「そうか。俺は生きたいな。」

その時、何気なく言った言葉に意味があったのかなんて知る由もなく、モニターの中では生徒達がダラダラと時間を過ごしていた。