六つ目の灯火 ページ6
通された部屋には美しい女性がいた。
｢私は医者ではないから、一応彼女に診てもらいなさい。｣
｢あの、私は｣
｢頼むぞ。｣
私の返答を聞かずにそそくさと部屋を出ていく鶴見さん。
私は人ではないから、人の医者に診てもらってもなあ。
｢どうぞ、ここに座ってください。｣
｢ぁ、ああ、分かった。｣
促され、そのまま丸椅子に座る。
いくつか質問をされて答える。
きっとどこも異常はないと判断したようだ。
以上です、と鉛筆を置いた彼女は私を見つめる。
そのままそっと私の頬に手をかざす。
まずい
咄嗟に手を払う。
その動作に彼女は驚いたような顔をした。
｢す、すみません！なにかお気に召しませんでしたか！？｣
｢あ、いや、こちらこそすまない…。｣
そっと口元のマフラーをグイッと上げた。
マフラーをしていたのにこうも無防備に触れられそうになるのは滅多になかった。
それはみんなが触ると危険と分かっていたからだ。
鶴見さんに話したとはいえ、きっと彼女をはじめとする多くの仲間に話す時がくるはずだ。
一人一人に話すと考えると億劫だ。
まあ、必要になれば話そう。
｢ところで、チェック、は終わったのか？｣
｢ぁ、はい。どこも異常はありません。でも、顔色があまりよろしくなく見えたので…。｣
｢ああ、だからさっき。｣
頬に触れて温度をはかろうとしたのか。
善意を無駄にさせたことに少し後悔する。
しかし危ないものは危ないのだ。
｢鶴見さんのところへ移動しましょうか。｣
｢わかった、えっと貴方は…｣
｢家永です。家永カノ。｣
｢古火Aだ。｣
うふふと微笑んだ家永さんはとても美しく、品のある女性だ。
それに仕草も丁寧だからきっと育ちが良いのだろう。
建物から出ると馬車が停まっていた。
そのまま乗り込み家永さんに状況を聞く。
｢ここから少し離れた場所に病院があるんです。そちらに向かうように言われています。｣
鶴見さんは隊舎に残っていた兵士から私が倒れていたことを聞きつけこちらに様子を見に来ていたようだ。
目を覚ましたので私を家永さんに任せて病院に戻ったと言うわけらしい。
ガタガタと揺られながら目的地へと向かった。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
