四つ目の灯火 ページ4
少しの間ぼうっと窓から外を眺めているとバンッと勢いよく扉が開かれた。
先程の男だった。
｢私のものだがね、君が使うといい。｣
｢あ、いや、そんな、｣
｢いいから受け取りたまえよ。｣
やたらと押しの強い男に負けた私は黒い革手袋を受け取った。
随分と高級そうだ。
｢すまないな。ありがとう。｣
私が手袋をはめたのを見ると男は先程のように手を出した。
今度は私も心配はないのできゅ、と握手を交わした。
｢私は鶴見だ。ぜひ君のことを知りたいのだが。｣
｢ぅ、わ、私は…ぁ、古火Aだ。｣
咄嗟に出た偽名。
古戦場火だから古火。なんとも安直だが仕方ない。
｢そうか。では古火くん、君はなぜ倒れていたんだ？｣
｢わからない。…ただ覚えているのは灰色の空と、声……。｣
｢声？｣
｢ああ、……冷たい、助けてくれ。って。｣
魂との波長が合ったのだろう。
その魂がどこの戦場のものかはわからないが、鶴見さんを見た時懐かしいと感じたから、恐らく彼との関わりがある魂だろう。
｢君、本当にわからないのか？｣
｢何がだ。｣
｢全てだ。本当は全て知っているんじゃないのかね。｣
見透かされたようだった。
私を突き刺す視線に今すぐ魂となって消えたくなった。
｢君には私に助けられた恩があるとは思わないかい？｣
｢は、｣
｢恩人には恩返しをするのが礼儀ではないのか？｣
｢そ、れは、そうだが、｣
｢私は君のことが知りたい。嘘ひとつ無い君の情報が欲しい。｣
なんでやつだ。……恐ろしい男だ。
｢……そうだな、恩返しをしなければいけないな。｣
結局私がまた負けたのだ。
こんなにも早々と自分のことを話す時がくるとは。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
