十三個目の火の玉 ページ13
｢あー！やっと来た！｣
｢遅れてすまない、……と、鯉登さん達は何を…？｣
跡を追って着いたのは集落のようだった。
鯉登さんと月島さんが例の女の子と何やら話し込んでいた。
｢報酬の交渉だ。｣
｢？？｣
｢鯉登少尉が移動するのに歩きたくないから、エノノカの爺さんを雇って犬ぞりで我々を運んでもらおうとしている。｣
エノノカちゃんは器用にそろばんを弾いて鯉登さんと交渉をしている。
というか歩きたくないからってとんだボンボンだ。
……まあ移動が楽になるのはいい事だが。
｢あの後大丈夫だった？｣
｢クズリか？…ああ、なんともない。｣
フッと笑いながら言うと杉元さんと谷垣さんはホッとしたように見えた。
その先でエノノカちゃんと鯉登さんが交渉を終えたのかがっちり握手をしているのも見えた。
早速犬ぞりに乗り込む。
.
｢アイヌの女の子と三人の男。ここのロシア人の村のこと聞いてたって。｣
｢この村？じゃあ立ち寄った可能性は高いな。｣
すん、と鼻をくすぐる酒の匂いがする。
そちらを見ると建物があった。
杉元さん達を置いてきたがまあ大丈夫だろう。
中に入ると人相の悪そうなロシア人が数名座っていた。
ギロりと睨まれてはこちらも睨み返すしかない。
一人がガタッと乱暴に立ち上がり私の目の前に立ち塞がった。
｢何か用か……と、通じないのだったな。｣
ペラペラと喋り始めるがさっぱりわからない。
おそらく女が一人で来るところじゃねぇ、さっさと帰れ、みたいなことだろう。
正確にはわからないが、ニュアンスとこの場の雰囲気でそう感じ取るのは容易だった。
……言葉が通じないのは面倒だな。
｢わっ、｣
急に後ろから羽交い締めにされる。
ふむ、油断していたな。
男は服から触れているので火傷は負っていない。
となると今から私を殴る予定のこの男が怪我をするわけか。
｢
｢それはどういうことだ？｣
｢…！？…Оох！！！！｣
私を殴ろうとした男が横に吹っ飛んだ。
彼を殴ったのは月島さんだった。
カウンターに腹を強打した男はキッと月島さんを睨む。
月島さんの後ろには他のみんなもいた。
とりあえずロシア語のわかる月島さんが飛び出したと言うわけか。
つまり私を助けに来てくれたということか。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
