一つ目の灯火 ページ1
｢主様、今すぐお逃げください。ここは私に任せて。｣
｢ダメだ！其方も来るのだ！｣
｢主様、私の最後のお願いです。｣
そっと主様に転送の呪術を施す。
この程度なら主様ならすぐに解けるが今の状態では無理だろう。
｢待ってくれ、あぁ、＿＿＿＿！！｣
主様の伸ばされた手に私は微笑むだけだった。
キラキラと光に包まれていく。
フッと消えた主様を見届け振り返る。
目の前にいる少ないとは言えない数の敵を睨む。
｢さあ、思う存分やり合おうじゃないか。｣
全身がビリビリと痛み出す。
ああ、これだ。
久しぶりに全力を出すなあ。
.
戦場で眠っている体を抜けて魂のみで燃え上がる。
それこそが私なのだ。
周りに火の玉が現れる。
肌にビリビリ感じるこの感覚。
｢悪霊よ、私と対峙したことが運の尽き。せいぜい嘆くが良い。｣
燃え上がれ、我らが魂。
目の前は紫色の炎に包まれる。
悪霊の叫び声が聞こえる。
その度に全身が震える。
昂るのは私と彼らだ。
.
｢ッ、……はぁ、っ、…倒しても倒しても湧いてくるな。｣
悪霊ってのは量産物なのかい？
もう力も残ってないんだが。
｢仕方ないな、……秘儀、�犇伐侘�風挙�瓠�！｣
少ない力を全て出してやろうじゃないか。
目の前の悪霊に拳を入れていく。
より熱くなった拳は触れるだけで体が燃え上がる。
｢ぅオラァ！！！｣
最後、百発目に両手を悪霊共にかざす。
溢れる魂の炎が燃え上がり全てを焼き尽くす。
きっとこの炎が消える頃には周りには何者もいないだろう。
焼け野原となった古戦場と化すのだ。
仰向けに倒れると空が灰色だった。
｢みんな、この空の記憶があるから青空が美しく見えるんだよな。｣
ゆっくりと目を閉じる。
＊＊＊
『帰りたい、日本へ帰りたい。』
『冷たい、寒い、助けてくれ。』
暗闇の中を歩いていく。
歩くと声が通り過ぎる。
私はこれを知っている。
だから、手を差し伸べる。
｢ならば、……我が魂と共に来い。｣
それが私たちなのだから。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
