多分、そういう時期だから【高/峯/翠】

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午後のレッスンを終えて帰宅し、上着を脱ぎ、即座に制服のまま自室のベッドに寝転がった翠は、順を追って記憶を探り出した。



「……………」



手を後頭部と枕の間で組みAの姿を思い浮かべる。


俺、どうかしてるよ…。
Aがいないところで、Aのパーカーで…＿＿＿


翠は先日の『行為』に激しい自己嫌悪を覚え、未だに立ち直れていない。


鉄虎くんは何でも聞くって言ってくれたけど、友達に言えるような相談でもない気がするし…。


「男だな……」


俺も。


そう口に出すほどの自覚はあるよう。


俺は、Aが好き。

恥ずかしいけど、分かってる。十分理解してる。

分かっているのに。
どうしてモヤモヤするのかは今の俺には分からない。
何がこんなに、俺の心を惑わすのか…。


そうして、自身の心の片鱗に触れた瞬間＿＿ハッとする。
翠は、視界が大きく広がる感覚に支配された。



「＿＿＿＿」



そうだ……Aに自分の気持ちを言えてないからだ。

すげぇ、単純じゃん…。

俺、馬鹿だ…。
頭の中で考えてばかりで、Aに伝えるための行動に移さない自分に、ずっとイライラしてたんだ。
俺、未熟だし、顔だけとったらほんと何が残るのって感じのやつだから。

＿＿＿仮に好きだって伝えても、どうせAだって、俺のこと見てくれない。

そんな予感がずっと、ぐるぐるぐるぐるしてて＿＿



「………はぁ……」



鬱だ……。

自分に自信がないだけだ…。
やっぱり俺の性格、どうしようも無い……。

こんなんじゃ、Aは俺に幻滅するに決まってる。

俺のことを深入りされて、知られたら、嫌われてしまう気がして＿＿＿


＿＿＿＿だっさ、俺…………。

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