○ ページ38
ノックもせずに扉を開くと、そこにはベッドに腰掛けてスマホを弄る翠がいた。
「は…え⁉︎A⁉︎」
私の突然の登場に、酷く驚いているよう。
動揺してスマホを落とす仕草から、安否は読み取れない。
しかし、翠が反射で立ち上がった時、私の視線は足元に向かい、思わず首を傾げた。
「な、なんで家に…」
「怪我…」
「え？」
「怪我してない？」
私の問いかけに、翠は瞬きを繰り返す。
怪我、なんの話だ。
と言いたげに眉を顰め、う…うん、と頷いた。
その顔で、全てが全て、私の見当違いだったと
悟った。
よく思い返せば、友達は『転倒した』と言っていただけで、怪我の話は一切していない。
焦ってママさんに問いかけた際も、『ライブが終わってからは手伝いをしていない』と言っていただけで、『翠が怪我した』とは一言も言っていなかった。
なぜ私は、怪我をしていると思ったのか。
「………………」
一人でに焦り、一人でに呆れ返る。
友達に翠の戯言を言われ憤り、それに任せて翠の顔を顰めさせた。
惑わされた自作の虚構が塗り替えられたと分かり、膝から崩れ落ちた。
「俺が怪我してると思ったの？」
問いかけに、こくりと頷く。
「……ラ、ライブ、見てた？もしかして…」
「違う、友達から、聞いて…」
勝手に憤慨して、勝手に心配して、勝手にここまで駆けてきて…本当に、馬鹿丸出しじゃん、私。
自分の言動にため息を吐きたくなると、翠の口から代わりにそれが聞こえてきた。
「怪我なんて、してないよ。ちょっと転んだだけ」
「で、でも転んだの？」
「うん」
「……なんで？」
「いや、なんでって…。
…まあ、俺がいけないんだけどさ。
準備運動もろくにせずステージに立ったから、体、上手く動かなくて…」
「ツリーにされたって…」
「…………そうだよ」
あまり触れてほしくなさそうなのは、かっこ悪いと思っているからだろうか。
先日『絶対ヘマする』と言っていたことが現実になり、案の定な自分に苛立っているらしいことを、腕を強く握りしめていることから察する。
「…………はぁぁっ、もぉ〜〜びっくりしたぁー…よかったよ、無事で」
「勝手に勘違いしてただけじゃん」
「う、うるさいなぁ！」
当然の指摘にむっとしつつも、心の中は安堵で溢れ返っている。
翠は私が頬を膨らませるのに、ふっ、と鼻で笑いだした。小馬鹿にしてると思った私は突っかかる。
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5674C(プロフ) - たまたまきんきんさん» 嬉しいお言葉恐縮です！ありがとうございます！！ (2022年5月23日 12時) (
レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
たまたまきんきん(プロフ) - やばい、まだ全部読んでないけどやばい、何このときめき、やっば。狂いそう。 (2022年5月18日 14時) (レス) @page27 id: 4c9c318806 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - 彩さん» 意識しました！！！！読んでいただきありがとうございます！ (2022年3月21日 0時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
彩 - なんだかめっちゃ青春！！！ (2022年3月20日 16時) (レス) @page48 id: be844da8b2 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - ちゅーしちゃうぞ♡さん» ありがとうございます！！最後まで楽しんでいただけて、とっても幸いです！！^ ^* (2022年1月17日 6時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：5674C | 作成日時：2021年12月27日 14時
