虎 に 翼

肝 胆 相 照 ら す ページ17

「トスもう一本！お願いします！」

綺麗に弧を描いたボールは、

彼の手元へ。美しいフォームから放たれるそのスパイクは

小さな体格から想像が出来ないほど、繊細でいてかつダイナミック。

━━━━━━ その瞬間から、俺は虎上瞬のバレーに翻弄され続けている。

同級生の彼と打ち解けるのにはそう時間は掛からなかった。

いつの間にか彼は俺のことを「ユーキ」と呼び

俺は彼のことを「トラ」と呼んでいた。

それと同時に先輩方も彼の事を「トラ」と呼んでいた。

「達兄さん！ここの打ち方、教えてくれませんか？」

「おー！トラ、ここはな.......」

人見知りの俺と違って、トラはよく喋ってよく笑う。

当時の俺は、ほんの少しだけトラが羨ましかった。

━━━━━━━━━━━━━━━

「......ユーキ、

俺、明日の試合すぐ交代させられるかもしれへん」

「.....は？

ていうか、今日は俺ら別部屋だろ。

はやくベッドから退け

はやく部屋に戻れ

そんな猿芝居に付き合ってる暇はねえ」

「イタッ！イタイ！イタイて！なんでや！蹴り落とさんでもええやろ！！！！最近ユーキと話してへんからわざわざきたのにい！」

「嘘つくな今日お前健太郎さんの同室だろ？健太郎さんがうるさいから来ただけだろ！分かってんだからな！」

「俺がケンタロさんの事うるさいと思うとるみたいな言い方すんなや！！ユーキのイケズ！！」

まったく。足音まで煩い。

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