照くん、離れてください！ (ページ4)

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バッグを抱えて女子トイレに駆け込む。

『はあ、はあ、はあ…落ち着け、』

岩本照。

はじめて出会った瞬間、

身体中の血液が沸騰するみたいに熱くなって、

その見た目も、笑うとなくなっちゃう目元も、

泣きたくなるくらい好きになってしまった、

はじめは、ただそれだけだった。

普通に、恋ができるんだって思ってたのに。

…

「っ…てぇ、」

斜め前の席で授業を受けてた彼が、

少し顔を歪めたから、気になって、

大丈夫？、

そう、声を掛けようとしたのに、

先に反応したのは、私の身体のほうだった。

「照、どした？」

「いや、紙で指切っちゃっただけ」

…血、だ。

それも、甘くて甘くて、

とろけてしまいそうなくらい、

"もう今は人間の血は飲まないのよ"

そう、母が言ってた言葉が嘘みたいに

身体中が彼の血液を欲して寒気がする。

「ごめん、Aちゃん絆創膏持ってない？

…って、Aちゃん？大丈夫？？息荒いけど」

阿部くんに言われて我に帰っても、

反応が収まるわけもなく。

『…ごめん、ちょっと、』

絆創膏だけ渡して、教室を出た。

…

あの時から、照くんを好きな気持ちは募るばかりなのに、

遠くからでしか見ることができなくて。

それでも、十分幸せだって思い込んでる。

それに、彼の匂いに似てるチョコレートが手放せなくなっちゃったのも、

かなりな恋煩いだよね。

『人間に恋するなんて、本当、バカだな』

口を開けて、手鏡で"アレ"が引っ込んでることを確認してから

軽くため息をついて、トイレから出た。

『はあ…』

「ため息ついたら幸せ逃げちゃうよ」

びっくりして、思わず後退りする。

『…なんだ目黒か、』

「何だって失礼な」

目黒蓮。

彼もまた、私と同じ"仲間"だ。