照くん、離れてください！ (ページ19)

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やってしまった

そんなこと思ったって、もう何もかも遅い。

『わたしがすきなの、めぐろじゃないよっ、』

だからお願い、最後まで話させて…

「…俺の勘違い、か」

大きくてあったかい手が頬に触れると、

その指で私の涙を優しく拭ってくれる。

「…綺麗だな」

優しく微笑えんで、そのままぎゅっと抱きしめられる。

『ひかるくん、』

「なあに」

『…すきです。

ずっとずっと前から好きでした。』

ゆっくり身体を離すと、少し照れたような顔をして、

「そういうのは、俺から言いたかった…」

なんて、子どもが拗ねてるみたい。

『ひかるくんのほうがずっと先だよ。
ひかるくんからの愛、たっくさん貰ってたよ。』

笑いながら漆黒の涙を流す私を綺麗だといってくれる人は、この世界中どこ探したって、彼しかいない。

窓辺の薄いカーテンから差す、月の光が、

彼を綺麗に照らしていて、少しクラクラする。

「A、キスしたい」

その言葉に頭が追いつく前には、
もう、私の髪を頭から首筋にかけて、
指でゆっくり梳いていて、

こんな身体の状態でもわかるくらい、彼の醸す匂いは強烈に甘くて、
危険だってわかるくらい心拍数が急激に上がっていく。

『…ハァ、ハァ、ハァ、…』

「…どうしたA？」

彼の熱すぎる指を自分のと絡めて降ろしてから、

息を整えて、

『…これだよ、照くんのこと、ずっと避けてた理由』

キラキラした照くんの目をじっと見据える。

『私、吸血鬼なの。

だから、好きなら好きな人ほど噛みつきたくなる。』

「…だったらなに、俺のこと好きなだけ噛みつきゃいいじゃん」

『ううん、違う、
毒なんだよ、私たち。
私たちの体液は、人間にとって、毒になりかねないの。

…だから、もし、私のせいで照くんがって思ったら…』

欲望のままに唇を重ねて、

彼の臭気に目が眩んで首筋に噛みつこうでもすれば、

照くんは、二分の確率で…。

『離したくないの、ひかるくん』

自分でもびっくりするくらい、消え入りそうな声だった。

「離れないよ、ずっと。」

だからさ…

「唇以外なら、いいよね」

額、瞼、鼻、頬、と降りてきて、

「何があっても守らせて」

首筋にひとつ、黒紫の華が咲いた。