照くん、離れてください！ (ページ17)

今日:24 hit、昨日:0 hit、合計:87,352 hit

17 ページ17

今なら言える

…そう思ったのに、現実は無情すぎる。

"元気になったならイチャイチャしてないで早く帰りなさい！！"

なーんて、あっけなく先生に追い出されてしまって、
駅までの帰り道を、とぼとぼゆっくり歩く。

すっごい、微妙な距離感、で。

少し前を歩くけど、手を届けば触れそうで。

そんな照くんは、私がまた倒れたりしないか、
何度も振り返ったり、立ち止まったり。

はあ、と、もどかしさにため息が漏れれば、
しんどいと受け取って大袈裟に心配する彼。

これを何度も繰り返していく間に、
いつのまにか、改札の近くまで着いてしまった。

『…ありがとう。嬉しかった。』

「…ん。」

照くんと、こんなにも一緒にいられるなんて、思ってもみなかったから。

鼻がぐずぐずするのも悪くないかもしれない。

『…じゃあ。』

「ねえ。さっき、

…さっきの、答え、聞きたい。」

照くんのいう、さっきの答え、っていうのは、

保健室でいいかけた、アレのことだよね？

「…身体キツいのに無理言ってんのはわかってんだけど、
けど、やっぱ、知りたい。
好きな人のことは、何だって知りたい、受け止めたい。

…だから、教えてほしい。Aの本当のこと。」

帰宅ラッシュのごった返す時間、
あまりにも騒がしすぎるこの場所で、

私の耳には、照くんのまっすぐで綺麗な声しか、入ってこない。

佐久間先輩、なんて言ってたっけ。

"…好きなら、全部、どんなことでも受け入れる。"

"ずっと側にいたいし、大切にしたいし、全力で守ってあげたい。そう思うのが普通じゃん？"

もし、照くんも、同じ気持ちでいてくれるなら、

どんなことでも、受け入れてくれるなら、

照くんを'守りたい'って気持ちも理解してくれるなら、

『……照くん

今夜、予定ありますか』

そっと、一歩、二歩、照くんに近寄って、

『…少し、お話しませんか、うちで』

照くんの香りで充満してたら、
本当にどうにかなっちゃいそうだからさ。

なんて、ちょっとずるしたけど、

ほんの少しの勇気を振り絞ってみた。

「…俺今日死ぬのかな」

『ん？なに？』

「いや、ううん。

…じゃあ、お言葉に甘えて。」

きっとこの風邪は明後日までには治っちゃうでしょ？

だから、どうか思い出だけでも残させて。

この甘い香りを全部、閉じ込めさせて。