照くん、離れてください！ (ページ13)

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「へえ、阿部ちゃんってタバコの匂いすんだ〜意外〜」
「タバコって言ってない！スモーキー！ねえ？」

これが普通なのか、それともこの2人が変人の似た者同士なのか、それはそれはもう興味津々で。

「佐久間がフローラルってのもなんかなあ…あっ！柔軟剤だったりして！」
『それもあるけど、なんていうか、お花屋さんの香りに近いっていうか』
「へえ〜！俺お花屋さんかあー！なんか可愛くて好きー！」

なんだろう、落ち着く。
優しい人たちと、美味しいコーヒーと。

会いたいなあ、照くん。

「でもさあ、本当に照に触れちゃダメなの？」
「あのね佐久間、Aちゃんの話聞いてた？」

一応、一通り"ルール"は説明したつもりなんだけど、
やっぱり難しかったかな、人間には。

『触れても大丈夫です。…でも…その、』
「…その？」
「本人に言わせんなバカ。」
「違ぇよ、わかんねえんだって！」

はあ、と、一つため息をついて、阿部くんが口を開く。

「佐久間が仮にAちゃんのことを好きになったとしよう」
「……はあ」
「で、Aちゃんも佐久間のことが好き」
「え！そうなの？」
「仮だって言ってんだろアホ！…で、付き合って、恋人同士になりました」
「うん！きゅんきゅんしてきた！」
「じゃあそのきゅんきゅんしてる佐久間に質問です。
恋人同士になって、好きでたまらない相手と何したい？」

仮の話なのに、急に顔を赤くしてもじもじしはじめる。

「…えー、手を繋いだりぃ、ぎゅってしたりぃ、」
「うん、他には？」
「…ちゅ、ちゅー、とか？」
「まあそうだよね。それ以上の事とかね。
でも出来ないんだよ。」
「えっ！！なんで！！恋人でしょ！？」

…今さらっととんでもないこと言ってのけたけど、気のせいかな。

「…はぁ、だからぁ」
「俺がどうなったって関係ない」
「…佐久間？」

「…好きなら、全部、どんなことでも受け入れる。」

ちびちび飲んでいたいちごミルク。
その水面を見つめながらぽつりと呟いて笑った。

「だってそうじゃね？ずっと側にいたいし、大切にしたいし、全力で守ってあげたい。そう思うのが普通じゃん？
それに、好きな子のために死ねるなら俺は悔いはねえよ。」

なーんちって、なんておどけてみせた佐久間先輩が、なんだかキラキラして見えた。

『…照くんは、そう思うでしょうか』

私の質問に、佐久間先輩は

「他にどう思うの！？」

なんて、豪快に笑ったから、

余計に会いたくなっちゃったよ、照くん。