人生２周目はトップスター (ページ9)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:42,929 hit

４ページ9

衝撃のスカウトから数日後。

僕、カン・AはBIG HITの事務所へ来ていた。

あの日、家に帰った後両親と相談したらあっけらかんと「いいんじゃない？アイドルやってみなよ」と言われてしまった。
そりゃあ何度も何度も自分がメンバーに入ったらどんな会話をするんだろう、とか妄想した。確かにしたけど、いざ自分があの完璧な七人の中に入るとなると解釈違いすぎる。だから自分で断るのは難しくても、両親に一言却下と言ってもらえれば簡単に断れるだろうと思っていたのに！！

「いや、でも練習始まったら宿舎生活になってあまり家には帰ってこられなくなるよ？」などと説得してみたが、結局両親の目の前でパンPDに契約するという旨の連絡を入れる羽目になった。

そして、早速契約するための書類を書いて欲しいと言われ事務所へ呼び出されたのだ。

「こんな小さな会社から世界を代表するアイドルが出るなんて。誰も予想してなかっただろうなぁ。」

ARMYとしてずっと追いかけていたグループの始まりの地に足を踏み入れたのかと思うと何だかオタク心が疼いてしまう。

「Aくん、おはよう。」

ソワソワと入口付近で建物を眺めているとパンPDが近づいてきた。
僕はすぐさまニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながらお辞儀をする。

「パンPD、お久しぶりです。」

パンPDは僕に対してうんうんと大きく頷いた後、事務所内を歩き出す。

「ついておいで」

「はい！」

事務所内を数分歩くと、見るからに高級そうなお菓子が机の上にたくさん並んだ部屋に通される。

「これが契約にあたる書類だ。質問があったら聞いてくれ。」

手渡された契約書の項目をひとつずつ入念に確認していく。

これで僕もBIG HITの社員の1人になってしまうのか。
ずっと妄想していたことが現実になるなんて何だか不思議な感覚だ。
でも、ここまで来たらもう腹を括るしかないよなぁ……。

心の中で自分へ喝を入れて、できるだけ丁寧な文字で書類にサインを書く。

パンPDは僕がサインを書いた書類を確認した後、机の引き出しの中へ入れ立ち上がる。

「さて、これで君もうちの社員だよ。
嗚呼、そういえば今日は丁度他の練習生達も出社しているんだけど、早速練習しているメンバーのところへ行ってみるかい？」

「行ってみたいです！」

これはご褒美かな……？？
僕は期待に胸を弾ませ、満面の笑みを浮かべた。