人生２周目はトップスター (ページ5)

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コツコツと響く軽快な靴音とは反対に重い足取りで長い階段を上る。

壁に所狭しと貼られているポスターには“日本のスーパーメイクアーティスト K.S がついに韓国上陸”と大きな文字で書かれている。

ただのテレビ局のメイク担当スタッフだったはずの僕はいつの間にかテレビに引っ張りだこの人気者になっていた。
裏方であったはずの僕が表舞台にしかいられなくなった。

自分のメイクがいろんなところに知られるのは嬉しい。でも、実際は会社の言う通りに動き、会社の言う通りのメイクをするただの操り人形だ。
今の僕は昔思い描いた理想の姿なのか分からなくなった。

鍵のかかっていない重たい扉を開け、冷たい風が吹くビルの屋上へと出る。

風に煽られバサバサと揺れる髪の毛とコートの裾に不思議と笑いが出てくる。
ポケットから、仲良さそうに肩を組み笑っている七人の写真を取り出す。
僕にとっての唯一の癒し。

幸せそうに笑う彼らを眺めながら、鼻歌を歌っていると一際大きな風が吹き写真が空高く飛ばされていく。

＿＿＿＿＿待って！

大きく手を伸ばしながら、空を舞う写真だけを視界に入れたまま走り出す。

彼は気付かなかった。
屋上の端にフェンスがなかったことに。

やっとの思いで掴んだ写真と共に彼は地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。

気付いた時にはもう遅かった。

ぐしゃり。

醜い音と共に彼は全ての意識を手放した。