人生２周目はトップスター (ページ13)

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レッスン見学の途中で帰って荷物を用意すること早三日。

ようやく全ての荷物を纏め終えた。
持っていく荷物自体は少ないが、ついでという理由で部屋の隅々まで掃除してしまったせいで思っていたより日数がかかってしまった。

それ以外にも理由はいくつかあるけれど、今は内緒でもいいだろう。

会社の手配した引越し業者へ荷物を受け渡した後、もう一度綺麗に整えられた部屋を見渡してから残されたキャリーケースを持ちリビングへ向かう。

「オンマ〜！荷物の引渡しちゃんと終わりましたよ〜！」

向かった先にはソファーに座りのんびりとお菓子を食べている母がいた。

「あら、終わったのね。良かった。」

手にクッキーを持ったまま母は僕のことを上から下までじーっと見つめる。
視線に耐えきれなくなった僕は目線を逸らしながら声をかける。

「…オモニ？」

「A。他の子達にあまり迷惑かけちゃダメよ。みんなと仲良くね。
あと……私たちはいつでも貴方のこと応援してるわよ。いつでも帰っておいでね。」

ふわりと優しい表情で僕に言い聞かせる母。
その優しい眼差しと声に目に涙が溜まる。

「ふふ、もうA、今生の別れじゃないんだから泣いちゃダメよ。」

母は立ち上がり僕の目に溜まった涙を指で掬う。

「さぁ、行ってらっしゃい。」

「はい！」

弟と妹は学校に行っている。
見送りにいないのは少し残念だったけど、昨日の夜たくさん話をして一緒に寝たから大丈夫だ。

家の前に車で待機してくれていた会社の社員さんに挨拶をしてからキャリーケースをトランクに積む。
車に乗り込み、シートベルトをした後で窓から家を見る。

「頑張るのよ！」

大きく手を振る母が見え、笑顔を浮かべながら僕も手を振り返す。

「頑張るよ！行ってきます！」

車が発進し、だんだん小さくなっていく家を見ながら僕は宿舎へと向かった。