手先が器用 ページ5
「ん？どうしたんだい？」
ある日家の
そんな姿を治は影から見守っていた。勿論、無月が何を仕出かすか分からないからだ。要は監視である。
「これ、開けてよ」
「土掘ってたら見つけたんだ」一人の少年が云った。無月は暫く木箱を眺めていると「嗚呼」と理解したように頷いた。
「いいよ。この私が開けてあげようじゃあないか」
無月はそう云うと少年の頭を見て撫でて家の中へ入っていく。少年は無月を止めることなく黙って見守っていた。
「無月さん何してんの？」
「何ってあの木箱を開けてあげるんだよ。さっき見てただろう？」
「見てたけど…普通に開けてあげればいいじゃない」
「何で戻ってきたのさ」治がそう云うと無月は面白そうに笑って「分からないのなら黙って見とけばいいさ」と云った。
何処かを少し漁ったかと思えばご機嫌な顔で玄関に戻っていく無月。
「ほら、その木箱貸し給え」
「ん」
偉そうな顔をして少年は無月に木箱を渡す。無月は木箱を受け取ると何やらゴソゴソし始めた。
そして数秒後、カチャリと音が響く。
「開いたよ」
「はい」と少年達に木箱を渡してやれば少年達は嬉しそうに「すげー！！」と目を光らせた。
「相変わらず太宰のおっちゃんすげーな！！」
「怪盗みたいだぜ！！」
「俺も真似してやってみたのに出来なくってよー」
「コラ、誰だい？私の事をおっちゃんって呼んだ奴は」
「逃げろー！！」と楽しそうに去っていく少年達。無月は其れを笑って眺めていた。治は無月に近づくと「何をしたの？」と無月に問う。
「これを使ったのさ」
そう云って取り出しのは黒いヘアピン。どうやら無月は鍵の差し口にヘアピンを居れ器用に木箱を開けたらしい。
「昔、さっき居た少年の一人が家の鍵を忘れて入れないと泣いていた事があってね。これで開けてあげれば何故か気に入られちゃって。全く困ったものだよね」
「ねえ、其れ犯罪だから」
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