私が拾った【文豪ストレイドッグス】【完結】 (ページ26)

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虜ページ26

「太宰。敦が呼んでいるぞ」
「織田作〜、私今、忙しいから出られないって云っておいてー」
「残念ですね、太宰さん。僕はもうここに居ます」
「ふふっ、敦君も上達したねぇ。お陰で私、自殺しに行けないじゃあないか」
「行かないで下さい。国木田さんの雷がまた落ちますよ」

ヘラヘラと笑って家から出るのは太宰治。
無表情で何も云わず歩いているのが織田作之助。
太宰を逃がさまいと目を凝らしているのが中島敦。

「全く、昔から太宰さんは自殺好きだったんですか？…親の顔が見てみたいです」
「そんな事云われてもねぇ。無月さんは死んでしまったし、抑抑、この自殺癖は無月さんから貰ったものだよ」
「太宰がよく回収しに行っていたな」
「えっ！？」

信じられない、そんな表情で敦は太宰を見る。太宰は思い出すように頷いて「本当大変だったよ。服は水を吸って重くなるし、冬なんか特にね」と云う。

「大変だって分かってるならやらないで下さいよ！！」
「そう云われてもねぇ。もう私は自殺の虜なのだよ」

ポッと顔を赤くする太宰。きっとこの場に国木田が居れば「気色悪いわ！！」と太宰を蹴り飛ばすだろう。しかし、この場に太宰を蹴り飛ばすような人間はいない。

「まあまあ、頑張って呉れ給え敦君。…あっ、あの川いい川だね」

少し油断をしているとこうだ。川に勢いよく飛び込む太宰を見て敦が深いため息をつく。

「色々と大変だな」
「…そうですね。嗚呼、国木田さんにドヤされる！！ただでさえ太宰さんに手帳の紙を全部燃やされて機嫌が悪いって云うのに…！！」

顔を真っ青にして敦が叫んだ。

「手帳買っていくか？」
「気休めの手帳など要らんわ！！そう云われて今朝、谷崎さんが犠牲に遭っていました」
「そうか」

つくづく下っ端は大変だ、敦はそう呟いた。