アイドルとオタクとマネージャー∞

7.仕事スイッチ(大倉) ページ7

「なんだ、これ」


目の前で繰り広げられる状況を飲み込むのに時間を要する。

まぁ、俺でもこうなるわけやから、本人たちはそれ以上やろうなぁと大きく息をついてから改めて思う。

ヘナヘナと座り込む姿を見て、この子らはこれからどうするんやろ？と興味に変わってきては、気持ちのスイッチがオタクから仕事に入る。

そんなつもりはなかったはずで。

ただ、趣味のように他のアイドル追いかけてこの現場に来ただけなのに。

時間もあるし、トリになってるこの子らを見てから帰るでもいいかなというくらいの気まぐれでフロアの片隅を陣取っていただけやのに。


「面白いものに巻き込まれたかも」


思わずニヤリとしてしまったのは、これからの展開というか、頭に【ある】プランが浮かんだから。

まぁ、そんな簡単に自分の思う通りに行くとは思えないし、そんなにうまくいくとも思ってへん。

せやけど、そうなったらおもろいよなぁなんて考えから、ステージを這うようにして袖に捌ける姿を眺めてた。

ある意味でフロアは沸きまくってて、これが本当は演出でしたなんてことやったら炎上必須やけど、バズったと考えたらアリなのかもしれへんな。

ま、俺やったら、こんな悪趣味なことはしたくないけど。

1人のオタクがヘナヘナと横でしゃがみ込んではうな垂れて。

どれくらいこのグループを推していたかということがその背中を見て想像する。

…あぁ、せやった。

誰にでも推しがいて、こういう時にはめちゃくちゃ凹むし落ち込むし。

これは、やっぱり、誰かが手を差し伸べなあかんやん。

ってことは、その役目。

俺がしたらええんやない？

と、この段階でどうなるかはわからないことだらけながらも、俺の中の仕事スイッチが完全にオンになる。

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