検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:32,271 hit

72-思い出を-(Side B) ページ23

あの後からは特に何もなく、

私も体調もよく過ごしていて、

出掛ける時には車になったし、

外出は常に信五さんが同伴になった。

この頃には

もう籠の中で暮らそうと諦めに似た気持ちになっていたから、

これを苦痛とも思わなくなっていたし、

お腹が大きくなると

無性に愛おしい気持ちと同時に隆先生を思い出した。

思い出すという記憶と気持ちだけはいつでも自由だから。


お腹の中の子は男の子。

子どもができる前は

女の子が良いななんて思っていたのに、

今は男の子で嬉しい。

どちらでも元気に生まれてきてくれたら嬉しいのだけれど、

私は一生この籠を出ることはできないのだから。

だったら男の子が生まれて、

育てるほうがシアワセな気がしてきたから。

隆先生の思い出だけで生きて行くためには、

やっぱり男の子がいいと思ったから。


「元気で生まれてきてね」


お腹を撫でるのも様になってきた。


…あれ?


なんとなくお腹の張りが気になって時間を確認する。


「…もしかして…」


少し確認していてから、確信する。

まだ10分間隔。

スマホを取り出して、


「…信五さん?もしかしたら…」


そんな連絡をしてから、病院にも連絡を入れる。

準備をしてあったキャリーを出していると

少ししてから信五さんが帰って来た。


村「A!大丈夫なんか!?」


「一人目だし、そんなにすぐは生まれないよ?」


私以上に焦っているのか、

ハンガーを落としたり、

テーブルの角にぶつかったりと慌ただしい信五さん。


「信五さん、落ち着いて?」


村「落ち着いていられるかっ!」


「産むのは私だし…っていたた…」


村「大丈夫か?」


さっきより痛むお腹。

それでも、

少しずつ狭まる痛みの収まった間隔を狙って病院に急ぐものの、

いつもよりも安全運転すぎる信五さん。

また一つ、

彼の新しい一面を見た気がした。

助手席でクスクスと笑っていると、


村「なんやねん」


とチラリと私に言うものの

顔が引きつっているところを見ると、

なんだか私以上に緊張しているみたいだ。

73-元気な男の子-(Side B)→←71-十字架-(Side信五)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
161人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

華絢(プロフ) - めちゃさん» めちゃさん、コメントありがとうございます(〃ω〃) もしかしたら…で当たりましたか?(ノω`*)んふふ♪ すばるくんは怪しい存在なので、まだ大丈夫であればお付き合いください(〃ω〃) (2018年3月12日 14時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - ラストはちょっともしかしたらなんて思ってもみたしたが、文字で読むとゾクッしました。またあのすばるくんの感じが怪しいすぎて良かったです。また次作も楽しみにしてます。 (2018年3月12日 14時) (レス) id: c69cfecf41 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - sangozygoさん» ありがとうございます(〃ω〃) どハマり!とっても嬉しいお言葉♪ あっちでもこっちでも、私、両手広げてお待ちしてます(〃ω〃) (2018年3月12日 8時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ありがとうございます(〃ω〃) 続編ですかね♪ご期待に添えられるかは分からないのですが楽しんで頂けたら嬉しいです(ΦωΦ)! (2018年3月12日 8時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
sangozygo(プロフ) - 完結お疲れ様でした。いやー、こういうテイストがどハマりしたと思ってます。またあちらで絡みに行かせてくださいませ! (2018年3月12日 7時) (レス) id: 2d16d0288e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月5日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。