奇しきめぐり合わせ。2

69-天罰-(Side信五) ページ20

病院のベッドに横たわるA。

俺が出掛けようなんて言わんかったらよかったんか？

電車で出掛けたいと言ったAを制して、

無理してでも車で出掛けたらよかったんか？

俺がしてきたことの報いを、

なんでAが受けることになるん？

シアワセしかないような状況の中出掛けたから、

なにかのバチでもあたったんやろうか。

それやったら、

Aにやなくて、俺にしてくれへん？

俺にはもう手をぎゅっと握るしかできんくて、

その手の甲に自分の額を押し付ける。


村「…俺のせいやんな…すまん」


あの時、

階段を降りようとしたAが、

手を繋いどったのに、

ゆるく繋いどっただけやったから、

その手に力を入れる前に指が離れた。

ふわりと浮いたAの体。

手を伸ばしても届かなくて、

ハッとして振り返ったところに見えた顔。

…それよりも、

下に落ちて行くAに向かって、名を呼んだ。

すぐに駆け寄ったんやけど、

意識を失ったAが居って、


村「救急車！早よ、救急車呼べ！」


俺の声と周りに居った人らの悲鳴で、

駅員が慌てて飛んでくる。

出血やったりそういうもんはなかったんやけど、

救急車が来るまでの数分は

今まで感じたことがないくらい長く感じた時間やし、

AもAの腹ん中に居る子どもも心配やろ？

病院に着いてAが診察を受けとる時に、

やって来た警官に状況やったりを聞かれたんやけど、

本人にしかわからんとは思うけど…

それでもそうあっては欲しくないと思って、


村「自分で足を滑らしたのかもしらんな」


と話しておいた。

Aとそれにあの坊ちゃんが見えた気がしたんやけど、

あの位置からやったら

AからはAには届かへん場所やったから。

ただの天罰やってことで俺の中で収めることにした。


もしこのまま…


このままAが目を覚まさへんかったら…？

生きとるのに、このままやったら…。


規則正しく鳴る電子音。

まだ目が覚めへんから、

そんな不吉な考えが頭を通り過ぎて、

考えたくなくなって、

ブンブンと頭を振ってそんな考えを追い払った。

そうなったら、

俺はもうどうしたらええのかわからへん。

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