奇しきめぐり合わせ。

36-ゆがむこころ-(Side隆平) ページ36

…あほやろ？

年頃の男女を毎週2時間も閉じ込めとった結果やで？

あ、テスト期間は週2でやったかな。

そんなことをしとっても

成績が落ちるどころか

上がったからこそバレへんかったんやけど。


せやけど、

内緒で付き合っとったからなのか、

Aちゃんが短大卒業してすぐに

お見合い話が持ち上がって、

この関係を続けとったらあかんって思ったのは僕の方。

Aちゃんのことはめっちゃ好きやったし、

いろいろと好みやったし。

まぁ、僕の好みに育てたってのもあるんやけどな。

それでも、

僕らの関係は公にできひんものやし、

なによりも立場が違った。

公的に結ばれることはないとわかっとったことやから、

いつかそんな日が来た時には

僕から身を引いて

Aちゃんの幸せを願おうって心に誓っとった。



…あの日までは。



お見合い相手がなんであいつなんやろ？

うまくいかへんことを願ったんやけど、

そんな僕のちっぽけな願いなんて

聞き入れてくれるほどカミサマも暇やなかったみたいで、

あっという間に結婚まで決まっとった。

相手が違ったら、

僕は純粋にAちゃんのシアワセを願ったはずやし、

こんな風にゆがんだりもせんかった。


それでも、心のどこかでは、

やっぱりAちゃんのシアワセは願っとって、

満足して満たされる、

誰がどう見てもシアワセっていう家庭を築いてはったら、

今でも連絡を取ったりせんかったのに。


.


塾講師をしとる僕。

普通のサラリーマンとは違って、

平日の昼間は空き時間。

時間はいくらでも作ることはできるし、

それに、Aちゃん以外の女の人やと

どうしても満足できひん僕もいる。

なんやろうなぁ。

Aちゃんを見ると後ろに、

村上先輩の顔が霞むんやけど、

あの自信満々の顔が歪んでいくところとか見たいやんか。


僕の手で、

あいつが苦い顔をするところを

高みから見て笑いたいやん？

本人はきっと覚えてへんと思うんやけど、

僕がこんな風に思うようになったのは、

学生時代に年上やから先輩という立場で、

リーダーのように

いろいろ仕切ってはったのは村上信五で、

僕のことも顎で使う後輩のひとりやったと思うわ。

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