1-花嫁-(SideA) ページ1
『…はい…誓います…』
ステンドグラスから漏れてくる光が優しくて柔らかくて。
-誓いのキスを-
という言葉でベールがあげられて、
綺麗な顔が近付いて。
少しだけ間があってからふわっと唇が触れ合った。
大衆の面前でキスをするなんて、
こんな時にしかしないし、
こんな時じゃないと出来ないこと。
高い天井にパイプオルガンの音が響いて、
バージンロードを歩くと両サイドから花びらが降ってくる。
友人たちが口々に「おめでとう」と声を掛けてくるから、
はにかみながら笑顔を返した。
両親が泣いているのも横目にうつる。
娘が年下の彼を連れてきたと思ったら
結婚の挨拶だったし反対されるかと思ったのに、
母は「こんな娘ですが〜」に
父も「若いの捕まえてよかったな〜」
なんてデリカシーのないことを言っていたから、
ここで泣くなんて意外だった。
結婚式って花嫁が感極まるものかと思っていたけれど、
案外冷静にいられるものなんだなってことを知った。
高砂に座っているだけで、
司会の人に進行を任せてしまえば特にすることもなくなって、
笑顔は崩さないまま今日までのことを振り返る。
----------
苗字はさっき変わったので、私は大倉A。
大学卒業して働き始めたアパレル会社。
なのに、4年働いた時に倒産。
急に路頭に迷う事になって、必死になって就活しはじめた。
学生時代から付き合っていた彼もいたけれど、
年上で頼り甲斐があると思っていた彼はただの夢追い人。
定職につくわけでもなく、
口癖は「いつかビッグになって売れんねん」だった。
昔はそういうところが好きだと思ったけれど、
それはただの若さだと気がつきはじめ、
私が就職してからはだんだんとなにをしているのかも分からなくなってきて、
好きだから付き合っているというよりも、
情だけで過ごしていた。
それでもなんとなく彼を支えて結婚して…なんて思ったけれど、
現実問題として働き口がなくなって目が覚めた。
このままじゃダメだ。
パチンと覚醒したように、
すぐに彼には別れを告げて、
半同棲のようになっていた荷物もまとめて出て行ってもらう。
まるで断捨離のように機械的にしてしまえば、
身も心も楽になったようで、
少し広くなった部屋も逆にスッキリした気分になる。
そうなると不思議なもので、
今までなかなかうまくいかなかった就活も、
トントンと話が進み面接まで漕ぎつけた。
210人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華絢(プロフ) - ひみささん» まったく違いすぎて、引かれないか不安ですΣ(゚д゚lll)ガーン (2018年2月19日 19時) (レス) id: 1867a62e47 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開、ありがとうございます(*^^*) 今までと違うテイストのようで、続きが楽しみです♪ (2018年2月19日 19時) (レス) id: 76e38abfc7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華絢 | 作成日時:2018年2月19日 18時