私達は双子で私は苦労人。【すとぷり】

そして親指下に向けろ。 ページ26

貴方side

村山は目を伏せる。
今、どんな気持ちだろうか。

『これが、私の返事』

私は吹っ切ったように清々しい気持ちだ。

『ねぇ、雫のこと好き？』

今まで言おう言わずしていた言葉を彼に向けた。
すると、ぴくりと肩が跳ねた。
図星だろうか。

『…まぁ、私には関係ないけど』

そう言い、髪の毛を軽く手でとく。

『でも、諦めるのは今のうちだと思うけどね』

「は？」

村山はよく分かってない様子だった。

『だってあいつ、3人…いや、4人に告白されてるし』

「はぁ！？」

村山はあまりの驚きに大声を出す。
おい今、夜だぞ。

「いや、え！？4人！？無理じゃんそんなの！
そいつらイケメン！？」

イケメン？イケメンかぁ。

『んー、まぁ、そうなんじゃない』

「嘘だろ！？」

だから夜だって。

「そんなぁ…」

あからさまに項垂れる村山。
本人は悔しそうにしていて、それがなんだかおかしくてケラケラと笑ってしまう。

「笑うなよ！」

『だって…っ』

夜だとわかっていながらも、笑いは止まらない。

「俺は本気だからな！」

その言葉を聞いた途端、笑いはピタッと収まった。

『へー』

「ん？」

私はニヤリと笑う。

『私のことは本気じゃなかったんだ』

私の短い髪が風に吹かれ、揺れる。
覗き込むように村山を顔を見れば、顔が強ばっている。
君には今、私はどんな風に見えてるのかな。

「それとこれとは話が別だろっ」

『…まーね』

少し声のトーンを下げる。
私は何を期待していたのだろうか。
「そんなことない」。
そう言われたかったのだろうか。

『あっ、そうだ』

帰りかけた体を村山に向き直す。

『恋する君にワンポイントアドバイス』

ニカッと歯を見せて笑ってみせる。

『お前みたいなクソ野郎に雫は渡さないから』

「じゃーね」と、後ろ向きに手を振る。
街灯に照らさせて反射するアスファルトを一歩一歩踏みしめる。

『んー、すっきりしたぁ』

ぐっと伸びをする。
背筋が伸びて気持ちがいい。

『村山に悪いことしちゃったかなぁ』

最近はなんだか独り言が多い気がする。
まぁ、それだけ色々考えているということにしておこう。
シェアハウスに帰ったらゆっくりお風呂に入ろう。
そしたら眠ろう。
明日は、仕事だから早起きしないとな。
マスクをつけずに行ってみよう。
帰りにケーキを買ってってもいいな。
想像を膨らませる。
わくわくして、足取りが軽くなる。

『ただいま』

ドアを静かに開ける。

いい人にだって悪いところはあるってやつよ。→←嫌いな奴には中指立てろ。

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