餃子に醤油をかける時、飛び散って白いTシャツに付いた時の絶望感半端ないって。 ページ22
貴方side
ギュッ
スニーカーの紐を固く結ぶ。
「もう行くの…」
雫が壁に寄りかかりながら、問う。
『もう行くよ』
鏡を見て、少しボサついた髪の毛を手ぐしで整える。
映っているのは前とは少し違った顔。
「
声色を変えて言う雫に「それは男に言う台詞」と、軽くツッコミを入れる。
「綺麗だね」
『いつもと変わんないよ』
「そうかなぁ。
私はマスクしてるAより、してないAの方が、綺麗だと思うよ」
『そりゃぁ、どうも』
ゆっくりと、ドアに足を進める。
「怖い?」
『別に』
「変なの」
『変だよ』
「頑張れ」
『頑張る』
数日前まで嫌いだった人と話してる。
そんな自分に、少し不思議な感じがする。
人間ころっと心境が変わるものだから、大きく宣言してしまうと後々恥ずかしくなってくる。
「私、Aと双子でよかった」
目が合う。
茶色の瞳は大きく、輝きを持っている。
羨ましい。
今でも変わらずそう感じる。
『そう?』
少し得意げな顔をしてみる。
そうすると、雫は笑う。
時が経つって、凄いなぁ。と、改めて実感。
「Aは?」
雫の目が細くなる。
まるで猫のよう。
『さぁ?』
わざととぼけてみせる。
私自身、分かってない。
双子でよかったのか、双子じゃなかった方がよかったのか。
『でも、今の
雫の目が見開く。
そして、零れる笑顔。
やっぱり雫は笑顔が似合う。
雫って、どちらかと涙を表しそうだけど、私はこう思う。
_____笑顔の雫_____。
ドアノブを捻る。
少し冷たいのが鮮明に伝わる。
怖くないって言ったけど、本当はそんなことない。
少しだけ。
ほんの少しだけ、怖い。
「よぉ」
見慣れた顔。
聞き慣れた声。
変わらぬ関係。
『よぉ』
嫌いだったり、好きだったり。
「久しぶりだな」
私は年中、情緒不安定。
『そんなに経ってないよ』
だけど今日は、ほんの少しだけ落ち着いてる。
「話って何」
怖い気持ちもほんの少し。
『今から話す』
落ち着いてるのもほんの少し。
「前の返事は」
笑っていられるのもほんの少し。
『今から話す』
私に笑顔の雫を分けてください。
『言いたいこと、言えなかったこと、今から全部、話すよ』
ほんの少しだけ。
双子の片割れってやっぱり辛いよ。→←200パーセント中の160パーセント。
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雨んぼ(プロフ) - 泣いちゃいました(笑)なんか、少し私と重なって、より一層泣きましたwwすっごく良かったです!これからも頑張ってください! (2022年5月11日 22時) (レス) @page48 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
葵音 - 泣いてしまいまいた。すご良くて、びっくりしてしまいました! (2022年1月26日 17時) (レス) @page43 id: c9207ab068 (このIDを非表示/違反報告)
元気に生きていたい! - はい!泣きましたァァ!!すごく良かったです!!!!! (2021年8月21日 18時) (レス) id: 0301fd6d5d (このIDを非表示/違反報告)
アネモナ - 涙がでできました!私はマスク外したくないから外せって言われるの大嫌いですね (2020年5月24日 0時) (レス) id: 8d7833d063 (このIDを非表示/違反報告)
miko - なんか、本屋に売ってあるようなクオリティーでとても好きな作品です!凄く面白かったです! (2020年5月12日 0時) (レス) id: 6feb6d5170 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あはぴー x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=2bf929b5ed877904e3eb7e3aafbf136b...
作成日時:2019年4月4日 15時