この恋、期間限定につき。 (ページ28)

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JN「じゃあお疲れ。気を付けて帰るんだよ。」

『お疲れ様でした。ありがとうございます、気を付けます。』

閉店作業を終えて外に出ると、今日も日が昇りかけていた。

いつもと変わらない帰り道、いつもと変わらないあたしの記憶。

半年前、あたしが目を覚ましたのは病院のベッドの上にだった。
何がどうなってそこで目を覚ますことになったのかは分からなかったけど、ユンギ曰く外で倒れていたところを通報されて救急車で運ばれたらしい。

目を覚ましたあたしに、病院の先生は名前は言えるか、自分の生年月日は言えるか、ここが何処か分かるか聞いてきた。
淡々と答えるあたしに、先生は始め安心していたけれど、今何月かという質問をされて答えたあたしを見て、目を見開いた。
一年前の3月9日、ユンギの誕生日からの半年間の記憶が、丸ごと消えているという事実を知る瞬間だった。

3月8日から、いきなり半年後にワープしたかのよう。3月9日を過ごした記憶なんてまるでないのに、時間は当たり前に流れていた。

失った3月9日から9月3日。
ユンギの誕生日から、あたしの誕生日までがどうしたって思い出せない。

3月8日だったはずのあたしの頭の中は、急に9月4日に修正されて混乱を起こし、数日間何も喉が通らなかったのはまだ記憶に新しい。

もうすぐユンギの誕生日で、つまり無くした記憶から丸1年が経とうとしているのに、未だに回収出来ないあたしの記憶の欠片は一体どこにあるのだろうか。

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