8. ページ9
大学での練習を終えて家に帰ると地下に行く扉が半開きになっていた。耳を澄ませると微かに音が聞こえてきて、下に続く階段を降りると明かりのついた部屋が見えた。
その部屋はシアタールームで、1人で何かを見ているテヒョンがいた。ソファーに座ってじっと見ていたけど私の気配に気づいたのか急に振り返った。
TH「おかえり、勝手に借りた」
「あ、うん…それはいいんだけど」
画面をちらりと見たら映画とかドラマではなく、去年の芸術祭の舞台の映像だった。今と違って黒髪のテヒョンと女の人が舞台の真ん中に立っているのが映し出されている。
TH「暇なら見てきなよ。ていうかもったいないね、こんないいのあるのに使ってないでしょ。デッキ埃被ってた」
「あー…うん、もう見る人いないから」
私もオンマも見ない、というより見なくなった。一緒にいる時間が少なくなったから。それと…
昔のことを思い出しそうになって目を強く瞑る。と同時にナムジュニオッパの言葉も思い出して、少しスペースを空けてテヒョンの隣に座ってみた。そしたらそれを見届けたテヒョンはまたスクリーンに視線を戻した。
舞台は恋愛をテーマにしてるらしく、テヒョンと女の人が向かい合って手を取ってる。テヒョンがゆっくりと女の人の両頬に触れ、額を合わせる。
「全然違う…」
思わずついて出た言葉だった。普段とは違って一変した空気に包まれているテヒョンはまるで別人で、本当に相手の女の人のことを想っている1人の男の人に見える。
「演技…なんだよね」
TH「うん。本当にこんなこと思ってない」
「ここまで変われるんだ」
普段のテヒョンを全て知っているわけではない、むしろ全然知らない。それでも分かるくらいテヒョンの演技力はすごい。ミヒが騒ぐのもなんとなく分かる。
TH「…楽だよ、舞台の上では別の誰かになることが当たり前でそれを苦しく思う必要ないから」
その言い方はなんだか悲しそうで。沈んでいるようにも聞こえたからもっと理由を聞こうと顔を横に向けたけど、何故かテヒョンは私を見ていた。
いつもよりも冷たくて、光のない目。
TH「…それはAもそうなんじゃないの？」
「？何が…」
TH「A、いつも心の底から笑ってないでしょ。パートナーのジミナの前でも、オンマの前でも」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 817人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「BTS」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あいす
| 作成日時：2019年10月4日 1時
