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微睡みと熟睡の狭間を行ったり来たりを繰り返して徐々に意識が遠のく。
水無月の冷たさが感じられない。
なぜか私は永眠できるとこの時、確信したんだ。
薄れる意識の中で走馬灯のように昔の記憶が浮かんでは消える。
本当に死ぬ直前はこんな風に思い出すものなんだなと場違いな感想さえ生まれる。
ふとお母さん、お父さん、2人の微笑みが浮かんだ。
｢｢A｣｣
優しい声が鼓膜をくすぐる。私を一瞥することも無く2人は背を向けて歩いていく。そんな両親に追いつきたくて全力で走るのに距離は縮まらない。
却って距離は離れて行った。
｢待って！ 置いてかないで｣
渾身の叫びだったと思う。
頬に冷たいものが垂れた。
なみだ……だろうか。
腕にも足にも顔にも水滴が当たる感触がした。
麻痺していた身体が外部の感覚を伝えた。
｢嫌だ……お母さん、お父さん｣
絞り出した声がきちんと2人に届いたかも分からぬまま私の意識が浮上した。
体が小刻みに揺れる。
｢…お…く……お客さ……ちょっと。
おまいさんっ。｣
外部から与えられる振動で覚醒した脳は音を拾った。
うっとおしい、そう思いながらもゆっくりとまぶたを動かす。
｢やっと起きたねぇ。こんな所で寝たら風邪をひくだろう。それにこんな夜分だ。親御さんも心配してるはずだからさっさとおかえり｣
私に話しかけているのだと理解するにはだいぶ時間を要した。
返事もせず仰向けの姿勢のままである私の目に心配そうな表情を浮かべた男の顔が移りこんだ。
釈然としない私に痺れを切らしたようで｢ほら｣と腕を引っ張っられて上半身をおこした。
｢雨も降ってきたっていうのに……ずいぶん呑気なもんだい｣
言葉は辛辣なのに腕に触れる温もりは優しい。
｢どうせあんた、こうもりも持ってないんだろう。しょうがない。これをやるから帰りな｣
私の上に開かれた傘の取っ手が差し出される。
こうもりという聞きなれない単語で反応に遅れたが、彼の肩はびっしょりと濡れていてずっと私に傘をさしていてくれた事が安易に想像できた。
片膝をついてわざわざ視線を合わせてくれる律儀な人。彼の杖が無造作に転がっていて彼の人柄の良さが見て取れた。
ああ、この人は菊比古だ。
今まで朦朧として気が付かなかったのが馬鹿みたいに菊比古という存在が認識された。
すると、先程まで死に誘われていたとは思えぬほどに脳が情報分析を始めた。
｢早ぇとことっとと……｣｢あの……何も分からないんです。分かるのは私の名前だけ……｣
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司(プロフ) - かさむらさん» ありがとうございます！ゆっくりな更新になるかとは思いますが、また覗きに来てください😊 (2022年3月10日 20時) (
レス) @page12 id: a9e06ac14f (このIDを非表示/違反報告)
かさむら(プロフ) - 好きです😭 (2022年2月21日 1時) (レス) id: 4aae2010b1 (このIDを非表示/違反報告)
司(プロフ) - 返信遅くなってしまい申し訳無いです。三年ぶりの更新ですのでこのページにいらっしゃる事はないかと思いますが、完結させるまで描きたいと思います。コメントありがとうござました！！ (2020年4月30日 20時) (レス) id: 619e207b44 (このIDを非表示/違反報告)
はな - 好きです (2018年10月4日 12時) (レス) id: 45985fda0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：司 | 作成日時：2017年6月12日 12時
